裏方カタ何処ドゴ!?
皆麻 兎
プロローグ
20●●年の4月――国立公園にある桜の木が満開を迎え、大勢の花見客が訪れていた。通りを歩きながら見上げるカップルや、地面にレジャーシートを敷いて宴会騒ぎをする会社員の集団。いろんな花見客を見ながら、俺――――――
「あっ…陸人!」
「おす…久しぶり!」
すると、自分が探していた集団の中にいた見覚えある顔の女性が、声をかけてきた。
俺は、他の団体の間を通りながら、彼女が立っていた集団の空間へ向かう。
「…電車の遅延か?」
「まぁな…って、富士原も来ていたんだな!」
俺がその場に座ると、右斜め前にいた青年・
「それにしても、うちのアルバイター。見ない顔が多くなったねー!」
「まぁ、進路とか仕事決まった子とかは、自然と来なくなるしね」
俺が来た事で、近くにいた女子二人―――
今、俺達がいる花見の団体は、“有限会社ガゴドムス”という会社の団体である。“会社”と名がついてはいるが、今この場にいる10代後半~20代前半辺りの男女のほとんどが、このガゴドムスに登録しているアルバイトなのだ。
今月は、花見三昧かもなぁ…
俺は、自分達の頭上に花開いている桜を見上げながら、ふとそんな事を考えいてた。
「ののかは、声優学校の方はどう?」
「うーん、いろんな事やるようになってきてはいるけど、結構充実しているよ!奈緒ちゃんは、今月から大学3年生…だっけ?」
「そうなの。去年はガゴドムスでいろんな所行けたけど、今年からゼミや就職活動も入るから、どうなるかわからないなぁー…」
女子二人の会話を、俺と富士原は、横目で聞いていた。
自分を含むこの4人は、ほぼ同世代ではあるが、学校やら何やら、生活環境がまるで違う。
「ゼミはどうだか知らねぇけど…就職活動なら、ガゴドムスやりながらでもいけんじゃね?」
すると、会話に入り込んでいた富士原が、そう口にしながら俺を指さす。
「そっか!陸人は、ガゴドムスでバイトしながら、就職活動していたんだものね?」
「まぁな。おかげさまで、なんとか入社できたけど…」
子供のように瞳を輝かせながらそう述べる奈緒美に対し、俺は少し挙動不審になりながら答える。
今あったように、俺はこの春から、社会人として働き始める年ごろだ。今回は奈緒美達のように顔見知りの奴が花見に参加すると聞いて自分も赴いた訳だが、これから新人歓迎会などで花見に引っ張られる可能性が高い時期でもある。
普段と変わらねぇが、富士原は、相変わらずたくさんシフト入れてるのかな…?
俺は、富士原を横目で見ながら、そんな事を思った。
俺達は、今回が久しぶりに会ったという事で、いろんな世間話をした。しかし、暗黙の了解なのか、富士原の事はあまり触れていない。その理由は、彼の場合だと親の借金を返すために大学へ行かず、アルバイトを掛け持ちして生計をたてるいわゆるフリーターだ。
因みに、俺達が所属する有限会社ガゴドムスは、登録制のアルバイトを雇い、イベントやライブ会場などにスタッフを派遣する会社だ。
派遣されるジャンルも様々で、大規模な展示会やアーティストのライブ等、大小様々だ。また、普通のアルバイトと異なるのは、“シフト”という概念がなく、自分の入りたい日に仕事ができるため、学業など他の事と両立しながらここでバイトする奴も多い。
「今思えば、私らって、結構一緒になる時期多かったわよね~!」
コンビニで買ってきていた弁当やジュースが大分減って来た頃、不意に新玉が呟く。
というのも、ガゴドムスでは100人近くの登録アルバイターがいるが、派遣される仕事内容や曜日によっては、同じ人と同じ現場に入る事もある。俺達4人は、それもあって仲良くなったといったところだろう。
「俺ら、住んでいる地域も全然違うのにな。不思議なもんだよなー」
富士原が同意を示し、その横で奈緒美が首を縦に複数回頷いていた。
「ってかさ、今日の花見はいないみたいだけど…
話が続く中、俺は声を少し小さくしながら呟く。
俺の
「そういえば、
沈黙が続いた後、最初に切り出したのが新玉だった。
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