第25話

「えっと、ダブルチーズバーガーセット1つ、飲み物はコーヒーで」


そう店員に告げ、待っていると程なくして、持っていた紙に書かれた番号が呼び出された。


「501番でお待ちのお客様ー」



町田は商品の乗ったトレーを受けとると、空いている席を探した。面の景色が見渡せる窓際が空いている。そこに座り、何の気なしに外を見渡す。通りにはカーディガンを羽織り、財布だけを持ったOL達が何やら談笑しながら歩いているのが見えた。何処のランチにするかなんて相談をしてるのであろう。楽しそうだ。今は昼休みの時間である。ここの店は昼休みに町田が良く利用するファーストフード店である。



はぁとため息を付く。



この後ろ向きな、口から空気が吐き出される行為の元凶は1つ、勿論安健だった。


焼き鳥作戦の日以来、まともに顔を合わせてないのだ。今日で5日目だろうか、指を折って確認する。どうやら先日持ち込んだプロットでゴーサインが出たらしく、今は執筆作業中らしい。昼間は資料収集がてら図書館で作業し、夜は只今貸し出し中の六畳部屋の執筆ルームに籠りきりなのだ。安健は今までとは違い、何か鬼気迫るものがあるというか、迫力がある。それだけ真剣に仕事に取り組んでいるんだから喜ばしい事のはずだが。何故だか面白くない。


安健が言っていた、小説が掛けるまで付き合ってくださいって。じゃあ、書けたらどうなるのだろう。はい、別れましょーとか言うんだろうか。そもそも恋愛契約なんてやっぱ無理で、でも言い出してしまったのは自分で、引き返せないから、せめてさっさと仕事終わらせて無かった事にしたいとか思ってるんじゃあ。


そんな堂々巡りの考えが何日も前から頭の中をグルグルしている。ああ、あの日に戻れたら、もし戻れたら、絶対イメプレなんてしないのに。安健に嫌われる様な事なんて2度としないのに。


そんな事を考えながら、町田はバーガーをほうばった。


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