第23話

町田は会社を出た後、足早に駅に向かった。雨が降っていたので、鞄を傘がわりに頭の上に乗せ、両手で鞄を支える格好で走っていた。天気予報では雨が降るとは言ってなかったのにな。ちっと、町田は自分の不運さに舌打ちをした。ついてないときはついてない。



すると駅の前に来たところで、炭火のいい臭いが町田の鼻腔をくすぐった。


焼き鳥屋か。


目の前には小さな数坪ばかりの古い木造の小屋があった。いい香りはどうやらそこからしてくるようだ。町田同様香りに引き寄せられたのか数名列を作って並んでいる。最近は安健の手料理ばかり食べていて、素通りしてしまっていたが今日はなんだか、足が止まってしまった。手ぶらで帰るのは何となく気まずいからだろうか。


安健、焼き鳥好きだったよな。そんな事を思い出した。雨が降っていたので、購入しようか迷ったが、電車に乗ってしまえば、最寄り駅から自宅のアパート迄は数分だ。もう既に幾らか濡れてしまったし。そう思い町田は列の最後尾に並んだ。






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