第21話 プロ来店!②


 〇


 あかねの咆哮に、今までいくら騒がしくとも身内で麻雀に興じていたセットが、目を見開いて振り向いた。あおいや東出に至っては耳を覆い、筒井も相当の渋面だ。そんな中、ましろだけが何食わぬ顔で、てんとして、


「はい」と答えた。「お兄様と私は、年は近く、同期でして」とも付け足す。


「うちの、あの、あほ兄貴が、プロォ!?」


 一方、あかねは衝撃の事実を告げられて慌てふためいている。確かに、麻雀の腕は(少なくともあかねよりは幾分も)達者で、雀荘のマスターとも知り合いで、なにかと訳の分からないやつだったが、まさか、プロとは思い及ばなかった。


「ご存知なかったのですか?」

「兄貴……兄は、私が中学生の時に家を出て行って、それ以来、時々会うくらいでしたから……」


 実際、あかねがはじめに会ったのも、もう半年前のこと。

 その時も突然夜中にチャイムが鳴ったと思ったら、「雀荘でバイトしたくないか?」と名乗ろうともせず、扉越しに用件だけを告げるものだから、無視を決め込みかけたところ、合鍵を使って中に入られた、という次第である。あの時は、本気で恐ろしかったし、いまだに若干恨んでさえいる。


「ふふ。風来坊な方ですからね」

「そんなもんじゃないですよ。あれは、ロクでなしの浮浪者っていうんですよ」


 やれやれとため息。そのくせ、彼が家を出ていったその日から、毎月欠かさず定額の振り込みはあるものだから、得体が知れない。


「テレビで、プロの対局などもご覧になりませんか?」

「そう……ですね。店で流れてたら、見るくらいです」

「でしたら、ご存じないのも無理からぬことかもしれません」


 柔和な笑みが、自分の無知を慰められたみたいで恥じ入るばかりだ。いや、そもそも、そういった情報を一切寄越さない兄が悪い。


「次にはじめさんにお会いした時には、あかねさんにお会いしました、と伝えてきますね――ところで、あかねさん」


 不意に名前を呼ばれて、向き直る。


「はい?」

「打てますか?」

「はい!」

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