ギルド

剣と盾の看板……ここがギルドで合ってるはずだ。


「樹、大丈夫か?しんどかったりしたら休憩するぞ」


これまでずっと引っ張ってきたからな。


「……」


無言で大丈夫といったポーズをする樹。


嘘ではなく、ホントに元気みたいだ。


魔力量がスタミナと色々関係してるんだろうか?


そんなことを考えながら、扉を押して開ける。


中はかなり広く、屈強な男性や鎧を身に纏った男性、露出が多めな女性等様々な『冒険者』っぽい人が大量にいた。


入ってすぐ前に三つのカウンターがあり、行列が出来ているのは二つ。もう一つに、ギルドカード登録といった看板が見える。またカウンターの横では机と椅子が大量にある。


俺達は椅子に座っている人達から、奇抜な者を見るような目線を向けられるが、話し掛けられるようなことは無かった。


そのまま、ギルドカード登録のカウンターへ。


「すいません、ギルドカードを登録したいんですが……」


カウンターにいるお婆さんに、そう言う。


「こんな場所、お前達みたいなのが来る場所じゃないんだがね……何か事情があるんだろう。お金はあるのかい?」


鋭いお婆さんだ。


「あー、一応あります。足りるかは分かりませんけど」


俺は鞄から袋を取りだして、適当に貨幣を出す。


「…………もしかしてあんたら、貨幣の価値も知らないのかい?」


うん、知らないな。


「はい、辺境から来たもので」


そう、申し訳なく言う。


「……まあいいだろう。お節介かもしれないが、暇だし色々と教えてあげる」


「本当ですか!ありがとうございます」


親切に教えてくれたお婆さんによると、この世界の貨幣は銅貨、小銀貨、銀貨、大銀貨、金貨、大金貨、白金貨、黒金貨に分けられており、銅貨は一アゼル、小銀貨が十アゼル、銀貨が百アゼルといった感じで増えていく。


五百アゼルで最低限の宿一泊分程度らしく、冒険者なら1日でまず千アゼルは普通にやれば稼げるらしい。


ちなみに俺達の持っている貨幣は、大銀貨のみ。

それで、これが三十枚。六十日は持つってことかね?


「まあお金の事はこれぐらいでいいだろう。次は依頼の受け方だが……向こうに大きな提示板があるだろう?あそこに張り付けてある依頼の中で、受ける依頼を横のカウンターに言えばいい」


またお婆さんが説明してくれる。


うん、確かに提示板のようなものに一杯張り付けてあるな。


「お前達はこれまで依頼なんて受けたことないだろうし、『ランク』も下だろう。だから受けられる依頼も簡単な物ばっかりだ。ただこれだけは覚えておくんだよ。どんな簡単そうな依頼でも、決して油断はしないことだ。外で薬草を摘むだけの依頼でも、運が悪ければ死ぬことだってある。……いいね?」


そう俺を真っ直ぐ見て言う、お婆さん。


「は、はい!」


「よし、いい返事だ。それじゃギルドカードを作ろうか。二人で一万アゼル。出せるかい?」


それを聞いて、俺は袋から大銀貨を十枚出す。


「これでいいですか?」


「うん、完璧だよ。……っと」


お婆さんは、カウンターの下から紙を取り出した。


「これに、名前と年齢、出身地を書いてくれ」


名前と年齢はともかく、出身地は……地球?日本?まあどっちでもいいか。日本で。


はは、樹さん覗かないで。


「これでいいですか?」


樹と一緒に、書いた紙を渡す。


樹も同じく日本と書いたようだ。


「お前達十六だったのかい!てっきり十三ぐらいと思ってたよ。それに出身地日本?聞いたことないな……まあいい、まっときな」


そう言うと、お婆さんは紙を持ってカウンターの向こうに。


少しすると、透明な小さい板を持って帰ってくる。


「お待たせ。これがお前達のギルドカードだよ。」


そう言い、板を渡してくれる。


透明な板に、さっき書いた俺の筆跡通りの文字が刻まれており。


そして、ランクという欄には『F』と刻まれていた。


「これでお前達も冒険者だ。ランク『F』ってのは一番下のランク。まあ色々こなしていけば自然とDまでは上がる。それから上は中々上がらないが……まあ上がれば上がるほど色んな依頼を受けられる。ランクに応じた、特典とかもあるんだよ。あとギルドカードはランクに応じて色が変わる。まあどちらも上がった時のお楽しみさ。……うん、こんなもんかね」


「なるほど……大体分かった気がします」


「はいはい、旅か何かだと思うが、気を付けるんだよー」


「はい、色々と教えてくれてありがとうございました!」


礼を言って、ギルドを離れる。


よし、カードも作れたしコルナダへ行こう!




おー、と控えめに片腕を上げる樹。


……心読んでるのか?

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