旅立ち

朝。


壁の時計を見ると、もう3時半だった。


顔を洗って、部屋を見る。


……もう、此処とはお別れで、これからはあちこちを転々とする事になるだろう。



感傷に浸りながら、鞄を持って扉を開けた。


「行ってきます、と」


部屋を出て、樹の部屋へ向かう。


「樹、いるかー?」


そう静かに言った後、樹の部屋の扉をノック。


ガチャ、と鍵の開く音がして、樹がこちらを覗いてくる。


「はは、俺だよ。準備はいいか?」


頷く樹。


高校の鞄を小さい肩に背負って、部屋から出てくる。


「さて、行くか」


俺達は、外へと向かった。


――――――――――


いまさらではあるが、王宮は大きい。


それに加え俺達の宿泊施設、訓練所等、様々な建物が近くにあるのだ。


当然、そんな広い場所の出口へ行くのには、なかなか手間取った。


空が大分明るくなって来た頃、ようやく門のような場所が有るところへ着く。


……門番みたいな人いるけど、大丈夫だろうか?


甲冑を着て、しかもハルバード?をもっているから門番だろう。


うん、考えてなかった。


いやいや、俺達は出ていく側なんだ、大丈夫大丈夫。


「樹、き、今日は良い天気だよなあ」


「……」


会話をしながら、俺達怪しくないアピール。


そのまま門を通ろうとしたその時。


「おい!お前……もしかして王女様が仰っていた子供か?」


思わずビビる俺。


「そ、そうです、今日出ようかなと」


甲冑のまま喋るその姿は、中々怖い。


「そうか。小さいのに大変だな。それにしても、二人もいるとはな」


ん?人数までは教えられてないのか。


まあ……俺に着いてくる人なんていないと思ってたんだろう。





うん、俺もそう思ってましたよ。


「そうなんですよー。まあしょうがないですね、はは。それじゃー!」


明るくそう言う俺。


「おう……大分割りきった性格だな。うまくやれよ少年!」


……良い人でよかった、うん。


俺達はそのまま真っ直ぐ、王都を歩いていく。


王宮から出て見る初めての景色は、とてもファンタジーだった。


中世ヨーロッパ風の家が並び、街行く人は茶色い何かの皮の服を来ていたり、鎧を来たいかにも強そうな人がいたりする。


昔やったゲームの、ドラゴンなんとかの風景とそっくりだ。


「樹、大丈夫か?ちょっとここ抜けるまで我慢してくれよ」


店が立ち並んでいるエリアに入ると、途端に人が増え、中々進みにくい。


樹の手を取って、そのまま進んでいく俺。


人を避け、前へ進みながら今後の事を考える。



うん……とりあえず、情報収集からだ。


地図とか欲しいな。出来ればだけど。


っと、やっとこの道を抜けれたか。


さて、人も良い感じに居るし、適当な人に色々と聞いてみるかな。


俺達は、辺境の村の出身で旅をしてる設定だ。


「あー、すいません。俺達、辺境の村から来たんですけど……」


――――――――――――――――


しばらく、色々の場所で聞き回った。


思ったよりこの街の人達は優しく、色々と教えてくれてよかったよ。


まず、ここが『王都ブレス』の中で、最も王宮に近い、商業区であること。他にも工業区等様々な場所で分けられている。


そしてこの王都ブレスから南に少し進むと

『コルナダ』、北へずっと進むと『魔法国家メルゼブルク』、西へ進むと『アラリエ』、東へまたずっと進むと『迷宮国家ダリエ』がある。


コルナダは今から向かうと昼頃には着くらしいから、取りあえず目標の場所はコルナダだな。


ノートとペンを見せると驚いていたが、簡単な地図も描いてもらった。有難い。


あと、ギルドや冒険者のワードを出してみたが、やっぱりこの世界ではそういったものがあると。


冒険者とは、雑用から魔物退治まで、様々な仕事を『ギルド』や個人から請け負う、フリーランスな職業。


ギルドで作れる『ギルドカード』なる物は、多少のお金はかかるが冒険者としての身分証明書として機能し、大体の国なら入れるようになるらしい。


俺達は恐らくだが冒険者として過ごすだろうし、まずギルドに寄ってから、コルナダに向かうとしよう。


よし、そうと決まれば移動だ!ギルドはここから少し南に行くとあるらしいからな。

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