前衛と後衛


マールさんが出て行った後、またアルゴンさんが入ってきた。


「座学お疲れさまだな!もう昼過ぎといった所だし、腹も減ってきただろう。これから食堂に案内する。ついてこい。」


ぞろぞろと皆がついていく。先頭集団が隼人グループってのはもうなんかお決まりだな。


そういや腹減ったなー、ちなみに朝ご飯は、いつのまにか部屋に置いてあったサンドイッチ?だ。美味しかったです。


異世界といっても、案外味は悪くないようで。

これからいつ帰れるかも知れない世界の食事が悪かったら、絶望してたところだな。



―――――――――――――――――――――――――――


「ここが食堂だ。これから三食ともここで取ることとなる。我々騎士団も使用しているが…味は保障しよう。適当に座ってくれ。」


かなり大きい建物で、木のイスに木の机が大量にある。THE食堂って感じだ。

机の上には、作りたてであろう料理が置いてある。


「よし!それじゃまた後でな!ちゃんと食っとけよ!」


アルゴンさんは全員が座るのを確認すると、そう言って食堂から出て行った。


さて、いただきますか。あ、俺の席は当然端っこだ。皆魔法の事について楽しそうに話している。


俺も出したいなあ……魔法。


――――――――――――――――――――――――――


料理の内容は、大きめのパンとトマト?のようなもので煮込んだ鶏肉?のようなものだ。


美味しかったです。


全員が食べてから少し経った後、アルゴンさんが入ってきた。

この人も忙しそうだなあ……


「食べ終わったようだな。午後からは、訓練所にて行う。それではついてきてくれ。」


アルゴンさんはそう言い、全員が集まるのを確認した後、俺達を引き連れて訓練所へと向かった。


周りから見ると、なんか親鳥がひな鳥を引き連れてるみたいなんだろうな……

俺達は子供だ。雰囲気的にも、体の大きさ的にも。


そんなことを考えていると、もう着いたようである。


「さて、今日はお前達の武器を選んでもらう!」


アルゴンさんの武器、という言葉に少しざわつくクラスメイト達。


「まあ今日は選んでもらうだけだ。実戦はまだまだ先だが、気を引き締めておいてくれよ?」


アルゴンさんがそう言うと、クラスメイトは静かになった。

隼人のカリスマも凄いが、この人も中々のものだ。伊達に副隊長ではない。


「この世界では、男が前衛、女が後衛ってのが多い。当然違うやつもいるがな。単純に身体能力が高い者や、チームの盾となりたい者、固有能力で身体強化を得ている者は前衛、固有能力で魔法強化や、固有の魔法を得ている場合は、後衛に入って欲しい。まあ各自で決めてくれ。」


んー、俺の場合だと完全に後衛だ、支援だし。前の世界では一応護衛術を身に付けていたが、身体能力が高いとも思っていない。ただ魔法が使えないんだよなー…


「まあ各自の希望を優先してくれ。それで武器なんだが、その前に少し説明をしておく。」


アルゴンさんの説明によるとこうだ。


人は、無意識化で身体に魔力を纏わせており、身体を強化している。


近接武器を扱う場合、身体能力が大きく関わってくる。


そのために、魔力をより纏わせる、ということにより、身体がより強化され、武器が扱いやすくなったり、威力も上がるようになる。当然、魔力量が多いとそれだけ纏える量を増やせる。


ただ、そんな簡単なものでもなく、鍛錬を通し時間を掛けて少しずつ纏えるようになるらしい。

またこれにも適正があり、ないと魔力を放出しているだけになってしまう。


「まあ何が言いたいかというと、前衛が良くても、前衛は止めておいたほうが良いって場合もあるんだ。一応覚えておいてくれ。」


うん、魔力量が少ない俺にとっては論外だな……


「それじゃ、前衛希望の者は俺についてこい。後衛希望の者は残っておいてくれ。」


アルゴンさんがそういうと、男子の大半はアルゴンさんについていく。女子もちらほらといるみたいだな。


残った後衛組は……知ってるのは樹と雫ぐらいかな。


アルゴンさん率いる前衛組が出て行った後、先ほどの座学のマールさんが入ってきた。


「どうもー!さっきぶりだね!武器選びだったっけ?あんま話すことないんだけどね…基本的には杖だし。あとはオーブとか他はあと…うん!まあこういうのは、自分がこれ!ってやつにするといいよ!」


確かに魔法は大体杖のイメージがある。それにしても説明適当だな……


「勇者様には国の魔法武器庫から、なんでも好きなやつを持っていってもらうよー!いっぱいあるからね!私も入るの久しぶりだなあ…全員着いてくるのだ!」


そうして、俺達はやけにテンションが高いマールさんと魔法武器庫へ向かうのだった。

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