春の子



新しきを生むとしても

旧来を消すことになる

その容易い真実を隠しながら生きている

遥かの春にいる子らよ

どうしてあるべきを否定するのか

如何にして貴様らごときが否定できようか


なんにもない雪道を歩いたあの日の午後

き、と軋んだあの日の午後

音すらないあの日の午後


ただ思うのはそう彼方の春の子のこと

外套に積もる雪を払いのけ佇むとき

ふと思うのはああ容易く壊れる本当のこと


どうしてなんにもわからなのだろうか

春の子らよ

どうして理解しないのか

貴様らがそこにいるからこそ壊れるというのに

春の子らよ

あの日を否定すれば壊れるというのに

春の子よ

願わくば新しきを生む前に




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