ひかりのこころ
いやいや、あれは只の光です。
どうしてあれを、灯台の光と言へましやうか。
あなたがそんなに悲しゐ顔をしてらっしゃるから、
あれが灯台の光のやうに見えてしまうのですよ。
そら御覧なさい。上を御覧なさい。
どうしてあれが、人を導く灯台の光に見えましやうか。
どだいあれはそのやうな、立派なものにはなれませぬ。
邪智低俗な只の光にすぎませぬ。
いやいやあれは只の光です。
どうしてあれを、月の光だと言へましやうか。
あんたがそんなに嬉しい顔をしてらっしゃるから、
あれが月の光のやうに見えてしまうのですよ。
そら御覧なさい。上を御覧なさい。
どうしてあれが、馨しき月の光に見えましやうか。
どだいあれはそのやうな、色ものにはなれませぬ。
荒唐無稽なただの光にすぎませぬ。
いやいやあれは只の光です。
どうしてあれを、火だと言へましやうか。
あなたがそんなに泣ひていらっしゃるから、
あれが火のやうに見へてしまうのですよ。
空御覧なさい。上を御覧なさい。
どうしてあれが、恐ろしき火に見えましやうか。
どだいあれはそのやうな、悲しきものにはなれませぬ。
無知蒙昧な只の光にすぎませぬ。
れえすのカアテンの向こうから覗ける光には
よくないものが映るというけれど、
あなたにはそれが灯台の光や月の光や火に見えるという
どうしてでございましやうねぇ
れえすのカアテンの向こうには
あなた様しか写っておりませぬ。
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