第8話 ボッサードの法則
真智子と
きっかけは、幹雄が社員旅行で真智子の住む広島へとやって来たのが始まりである。
東京の商社に努める彼と、広島が地元の真智子。偶然、街中のお好み焼き屋で二人が出会し、恋仲になるまでにそれ程長い時間は必要なかった。
つまりは、二人の波長がピッタリ合ったのに違いない。恋愛には、たまにそう言うこともあるものだ。
それでも幹雄は社員旅行中。当然おいそれと、二人だけで出掛けることなど許されるものではない。
夜、グランドプリンスホテルを抜け出して、近くの砂浜へと出向く幹雄。そこには既に一人の女性の人影が・・・
もちろん真智子である。
二人はほんの束の間、驚くほど静かな瀬戸内の波の音に愛を語らい唇を重ねる。
幹雄が広島を離れる日、二人は硬く将来を約束をして別れた。
あとは次回逢える時まで、携帯だけが二人の愛を
それから数ヶ月、はじめこそ日に何回もメールでやり取りしていたが、なかなか仕事中ともなると幹雄もすぐには返信ができない。
すると、美智子からは不満のメールがまた彼のPCへと送信されてくるのである。
(少しはこっちの身にもなってくれよ・・・)
そう思いながらも、幹雄はため息混じりにキーボードを指で押す。
数日後、今日も一日忙しく営業へと飛び回る幹雄。
会社に着くなり、今度は
「メール、メールっと・・・」
手慣れた手付きで、パソコンのキーボードを素早く叩く。
「重要なのは、これと、これと・・・」
その中にハートマーク入りのメールを見つける。
(何だよ、こんな時に・・・)
そう良いながらも、取り敢えずクリックをしてみる。
『幹雄ーっ、最近返信が遅いぞ! 浮気でもしてたら、うち
「浮気? 人の気も知らないで、何言ってんだか・・・」
そこに経理部の理沙が声を掛けて来た。彼女は幹雄の大学からの先輩でもあると同時に、そのスラッとしたスタイルとロングヘアーで、社内でも男性社員から憧れの的でもある。
「あら~ニヤけちゃって、彼女からのメールかしら?・・・」
言いながら、幹雄のデスクにコーヒーをそっと置く。
「そんなんじゃないっすよ! ただ、メールのチェックを・・・」
何故か慌てる幹雄。
「外回りご苦労さん。頑張ってね!・・・」
(理沙先輩・・・)
その後ろ姿を、うっとりと目で追う。
それから半年後、僕たちはめでたく結婚することとなった。
誰かとかって?・・・
それはもちろん、経理部の理沙先輩とである。
【ボッサードの法則】
一般に、物理的距離と心理的距離は比例するという法則。
つまりは、普段遠くにいる人よりも、近くにいる人の方が好意を抱きやすいということである。
誰かと付き合いたかったら、その人の近くにいるように心がけなさいという意味である。
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