第5話 ボイルの法則
「ねぇあなた、まだ係長にもなれないの?・・・」
妻の言葉に、夕食を食べる手を止め
「お隣さん家のご主人、今度課長に昇進されたんですってよ。あなた、確か同じ歳だったわよねえ?・・・」
「はあ・・・」
缶ビールを持つ手からも力が抜けていく。もちろんビールといっても、「第三のビール」と呼ばれる
まったく会社の社宅は家賃が安いからと、喜んで入居したのはもう20年前。以来、事あるごとにと周りに住んでいるご主人達と比較されているのだ。
やれ、どこどこの家では海外旅行へ連れていったくれただの、迎えの奥様、毛皮のコートをご主人からプレゼントされとか・・・
そうかと思えば、あそこの家のご主人の趣味はゴルフなんですってよと、碁盤にひとり石を打っているだけが唯一趣味の私に、これ見よがしにと妻のチクリチクリ攻撃が始まるのである。
最近では食欲減退だけではない、妻に隠れて胃薬まで服用しているのだ。
それでもそんな鈍感な妻に、その事を言い返せない夫である私。
(まあ、仕方ないか・・・)
「あなた、この頃少し
「そうかなあ?・・・」
「そんなんだと、昇進して係長になっても
「はあ・・・」
妻の言葉に、自分のやつれた顔を鏡に映して見る私・・・
【ボイルの法則】
一定温度の条件下では、気体の体積は(V)は圧力(P)に反比例するとい法則。
P×V=一定 (温度一定)という式が成り立つ。
つまりは、周りからの圧力が大きければ大きいほど、その物体の体積は小さくなるということ。
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