23時59分、迎えに来てね

恋歌

第1話 冷めきった主役

「ねーご飯はまだなのー!!??」

「もーお腹ぺこぺこだよぉー!!!」

ドレスを上下にバブバブさせて、決して上品とは言えない立ち振る舞いで朝食を催促するのは、私の姉たち。血は、繋がっていない。

(うっわー猿みたいヒャハハハハ!!)という内心で突く悪態を隠しながら、与えられた役割通りに優しい笑顔で「はい、ただいま。」と甘さを控えたパンケーキに目玉焼きと野菜を添えたプレートを3つ並べる。

「ひゃっほーーい!さすがは私たちの召使ね、料理の腕だけは認めてあげましょう?」

「えーやだよー!こんな薄汚い小娘にー?」

「こら、はしたないですよ。」

姉たちとは打って変わって、エレガントでセンスの良い服に身を包んだ50代というには若々しい女性が落ち着いた言葉で姉たちを鎮める。

女性は────私の、憎むべき継母は、一口大にパンケーキを切って口に運び一言。

「…塩味が足りないわね。これではただの味のしないパンでしょう。」

じゃあああお前が作れよおおおお…とは言えないから、私は「はい、申し訳ございません…」と謝る。

継母はこちらには目もくれず、冷めきった声で「まぁいいわ。」と言うなり、「今日は皿洗いの後は洗濯に掃除に街へ買い物に行ってもらうわ。そうだ、明日来客がいらっしゃるからドレスも仕立てて頂戴ね。」と言いつける。

大丈夫、こんなのは慣れっこだ。慣れているから、どこをどうサボれば良いのかも分かってるし、苦しさは感じない。



────もしもあなたが苦しみに溺れそうな時は、それを嘆くより先に、どうすれば良いのかを考えなさい。



そうでしょう?ママ…





人は生まれた時、1冊の本を与えられる。


その人が生まれてから死ぬまで、どのように生き、どのような物語を描くのかを定めた、「運命の書」。


ストーリーテラーとかいう『神様』が、自分の創った想区を舞台に面白いお伽噺を私たちに演じさせる。


それが、この世界の常識。


そして私の運命の書には…





私はシンデレラ。


いずれ王子様と出会い結ばれる、幸せな主役。

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