第16話誤認逮捕

 19-16

白木は通りから隠れたレストランだと安心していたが、猿橋はナビで探して、このレストラン「ランプの灯」で遅めの昼食をとりにやって来た。

「おお、運がある」と車を止めて、中に入る猿橋、隅の方に百合と理佳子と白木を発見。

興奮しながら「連れが、来ていると思ったのだが」と店員に告げると急いで店を出て行った。

これは表彰だ!興奮しながら携帯で警察に連絡をする猿渡、会社に表彰を横取りされると考えたのだ。


通報は移動中の和田達にも伝えられて、レストラン「ランプの灯」に向かった。

しばらくして、レストランの廻りには警官が多数で取り囲んで、和田達の到着を待った。

もし、先に百合たちがレストランを出たら、その時は取り押さえるとの確認もされた。

大勢の警官に興奮する猿渡、自分の表彰される姿を思い浮かべながら、木陰から見守っている。

「そろそろ、出ましょうか?」と三人が立ち上がる。

白木と理佳子が手を繋いで出口に向かう時、支払いをする百合。

「もう逃げられんぞ」と刑事と警官がレストランに乱入、白木から理佳子を抱き抱える様に連れ出す田所刑事。

「何!」と大声で叫ぶ百合を三、四人が取り押さえる。

「犯人逮捕!」

「人質救助!」と数人が叫ぶ。

「何をするのよ」と怒る百合の身体を拘束して、レストランから出ると、いつ来たのかマスコミのカメラが百合を狙って閃光を焚く。

「姫路警察に、連行だ」

「両親にも連絡をして、警察に来て貰え」と口々に叫ぶ。

レストランの駐車場から、道路まで何処にこんなに大勢の人が居たのかと思う程の人数。

驚いて「お母さん!お母さん!」と泣き叫ぶ理佳子。

車に押し込んで、走り去ると「子供を返して!」と百合も泣き叫ぶ。

刑事に両脇を持たれて、パトカーに乗り込む百合、何故?こんなに多いのだ?と白木も怪訝な顔でパトカーに乗せられて警察署に向かった。

テレビでは臨時ニュースが流れて、今まで知らなかった人までが南田夫妻の子供の誘拐を知ってしまった。

姫路警察に向かう麻由子は、近所の人に祝福されて複雑な気分。

市役所で、真三も同僚に祝福されて警察署に向かった。

百合は取調室に、理佳子は興奮状態で病院に入院の運びに成って、その時県警の和田達が姫路警察署に到着した。


この犯人逮捕のニュースは各局が、臨時ニュースで流す程で、徹の目にも入った。

思わず凜に「お父さんとお母さんの名前?」と尋ねた徹だった。

「パパとママが戻ってきたの?」と嬉しそうに聞く凜に「まだ、帰ってないのだよ」と落胆の表情にさせていた。

このニュースは徹には意味不明の出来事だったのだ。

夜間救急センターの渡辺も、夕方仕事の用意をしながら、このニュースを見ながら、犯人が逮捕されて良かったわ、先日のお爺さんの孫さんと同じ位の女の子だわね。

お爺さんの清算今日連絡してみるかな?と考えていた。

保険証を持参して来ないので、昨日催促をしようと思ったのだが、もう一日待ってみようと思ったのだ。


姫路警察では「子供は、理佳子は大丈夫でしょうね」と怒る百合。

「お前が、心配しなくても良い事だ」

「自分の子供を親が心配しないで、どうするのよ!」と怒る百合。

真三が先に警察に来て「犯人を見ますか?」と刑事に言われていた。

「はい、難い犯人を一度見て見たいです」とマジックミラーから見る真三。

「あの女が何故?」

「奥様の高校の同級生で、自分の子供の代わりに誘拐をしたのでは?」

「そんな!」と驚く真三。

取り敢えず病院に向かう真三と、入れ替わりに麻由子が警察に到着した。

「犯人を見せて下さい」と頼み込む麻由子、十五年も前に会った工藤百合を今見て判るのだろうか?

そう思いながらマジックミラーから見る麻由子。

この女が凜を誘拐して、もう一ヶ月以上連れ回していた。

興奮の麻由子は一言、言わなければ気が収まらない。

急いで部屋を出る麻由子を刑事の田所も、取調室に行くとは思わない。

いきなり入ると「貴女、何の恨みが有ったのよ!」と叫ぶ麻由子に「止めなさい」と止める。

和田刑事と藤井、佐々木が見守る中「バシー!」と顔を張る麻由子。

「貴女、誰よ!俊之の新しい女?」と驚く百合に「何を言っているの?南田麻由子よ、旧姓坂田麻由子よ」と大きな声で怒る。

「何故?何故?貴女がここに居るの?」と怪訝な顔の百合。

「お前、知っていて誘拐したのだろう?」と和田刑事が尋ねる。

「何の話?自分の娘を取り返しても誘拐に成るのですか?麻由子と何が関係有るのですか?」と聞く百合。

和田に小声で晶子が「この女狂ってしまっているのでわ?」と話す。

「そうか、自分の子供と他人の子供が判らない程ショックを受けてしまって、麻由子さんの子供を?」と小声で話す。

「麻由子が何故、ここに来ているのかよく判らないけれど、私は貴女の事は昔から好きよ」とまた大きな声で言う。

「好きだから、子供を誘拐するなんて!許せる話では無いでしょう?」麻由子が喚く。

「まるで、貴女の子供を私が誘拐した様に言うのね」

そう話した時、晶子が「向こうで話しましょう」と麻由子を引っ張って取調室を出た。

外に出ると「百合を精神鑑定に出す必要が有る様です」と麻由子に伝えた。

「えー」

「先程から、意味不明の話も多いのです」

「私の凜と自分の子供の区別が出来ない?」

「はい、その可能性が有ります」

「しばらく、見ても良いですか?」

「少しなら」と隣の部屋に入って行く。

「御主人が、今病院に行かれて、娘さんと対面されています、奥様も行かれては?」

「はい、もうすぐ、向かいますが、百合さんの話も聞きたいです」とマジックミラーを覗く麻由子だ。

その時「何度言えば、判るの!麻由子の子供なんて知りません、見た事も有りません」と大きな声が聞こえて、再び麻由子が飛び出して隣に入った時、青い顔で真三が戻って来て、麻由子の腕を掴んだ。

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