第7話

謙信が二時限目の終わりに教室に戻ると、磯貝が謙信の机に何かを入れようとしていた。

「おい磯貝、何してる」

「あ、おお!? 謙信、いや何もしてないよぉ〜?」

わざとらしく口笛を吹く磯貝を無視して謙信は机に手を突っ込んだ。何か紙切れが手に当たり、引っ張り出す。それは、ハートのシールで封をされた便箋だった。

「お!? すげぇな謙信、モテモテじゃねぇか! このこの! 羨ましいなぁ! って、無言で破るナァァァ!!」

謙信は便箋を細かくちぎりゴミ箱に捨てた。すかさず磯貝が駆け寄り、自ら「シクシク」と呟きながら破片を集め出す。

「書いている内に胸がドキドキしてきて、自分でもちょっとやばいんじゃないかと思うレベルの完璧な告白文をよくも! 俺が浪費した時間を返せ!」

「祿な人間じゃないな」

ピーチクパーチクと抗議の声を上げる磯貝を放置して、謙信は2時間目の準備を始める。準備と言っても、筆箱とノートを出すだけで、肝心の教科書はまだ貰っていない。

隣の席は未だ空席。

愛加は、どこに行ったのだろうか。



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