勝負の行方?

けものフレンズ大好き

勝負の行方?

 小規模なセルリアンの活動はあるものの、キョウシュウエリアは今日も平和です。


 けれども、へいげんちほーだけはどうやら勝手が違うようで……


「・・・・・・」

 かばんちゃんが目を覚ますと、そこは知らない場所でした。

 しかし記憶の糸を辿ると、そこが知らない場所などではなく、かつて来たことがあるへいげんちほーだと気付きました。

「え、なんで……?」


「ふっふっふ、拙者でござるよ」

 

 かばんちゃんの前でカメレオンちゃんが自信たっぷりに答えます。


「ちなみに呼んだのは私だ!」


 それ以上に自身満々な態度でヘラジカちゃんが言いました。


 かばんちゃんには何が何だかさっぱり分かりません。


「まあつまりこういうことなんだよ~」

 らちがあかないと判断したのか、ライオンちゃんが変わりに事情を説明を始めます。

 よく見れば、3人以外にもへいげんちほーのいつものフレンズ達が、かばんちゃんの回りに勢揃いしていました。


「えっとね~。実は今回私とヘラジカの勝負が記念すべき100回目を迎えたんだけど、最近同じことの繰り返しで。だから前みたいに君の知恵を借りようと思って」

「はあ……。でもなんで、その、誘拐みたいなことを?」

「あ~それは……」

 ライオンちゃんを初め、みんな随分と複雑な顔をします。

 しかし、空気を読むことが大の苦手で全く表情を変えていないヘラジカちゃんは、しっかり理由を説明してくれました。


「今かばんに話すと、頼んでもいないのにアライグマまでついてくる! あいつが入ると勝負が無茶苦茶になる!」

「……まあそういうこと」

「は、はあ……」

 思い当たる節があるのか、かばんちゃんまでなんともいえない顔をしました。



「へっくしょん!!! 誰かがアライさんの事を噂してるのだ!」

「そうだね~(笑い話かなー)」

「それよりかばんさんはどこに行ってしまったのだ!? パークの危機なのだ!!!」

「そうだね~(アレ多分カメレオンだからへいげんちほーだろうね)」

「とりあえずゆうえんちに行くのだ!」

「待ってよアライさ~ん(方向見事に真逆だねー)」



「……というわけで、また何か良い考えはないか?」

「そうですね……」

 頼まれたらかばんちゃんも嫌とは言えません。

 かばんちゃんは安全で、公平に勝敗が決められる勝負がないかと考えました。


 みんなの視線がかばんちゃんに集まります。


 特に――。


「じー……」


「・・・・・・・」


「じー……」


「・・・・・・・」


「じーーーーーーーー」


「わー食べないでください!」

「ひどぉーい……」


 ハシビロコウちゃんの視線は強烈でした。

 しかしそのとき、かばんちゃんにあるアイデアが閃きました。


「そうだ、にらめっこをしたらどうでしょう!」


『にらめっこ?』


 全員が不思議そうな顔をします。

「にらめっこっていうのは、お互い目を逸らさず向かい合い、変な顔をして相手を笑わせた方が勝ちになるゲームです」

「うむ、よく分からないがかばんが言うならやろう!」

「私も楽そうだからいいよ~」


 2人の承認も得られたことで、記念すべき100回目の勝負はついに始まったのでした。


「・・・・・・」

「・・・・・・」

 

 ヘラジカちゃんとライオンちゃんは相手から目を逸らさず、じっと向かい合います。

 

「・・・・・・」

「・・・・・・」


 いまいちルールを理解していないのか、2人とも顔を近づけ、真面目な顔で向かい合ったまま、微動だにしません。

 かばんちゃんも次第に不安になってきました。


「あの~」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「大丈夫ですか?」

「……はっきり言って面白い顔がどういったものかさっぱり分からんから、ライオンが笑うのを待ってるんだ!」

「ヘラジカって何もしなくても充分面白いよね~」

「じゃあ私の勝ちか!」

「でも笑うほどじゃないかな~」

「ぐぬぬ……」

「あははは……」

 かばんちゃんが苦笑してしまいます。


 どうやら勝負はつきそうにありません。

 やがて周りで見ていた他のフレンズ達も飽きてきたのか、ついにシロサイちゃんがこう提案しました。


「せっかですから、全員でやったらどうでしょう? 最後まで残っていた方が勝ちということにしてくだサイ!」

「えっと……」

 かばんちゃんはライオンちゃんとヘラジカちゃんの方を見ます。。

「私は構わん! 仲間も含めた全員に勝ってみせる!」

「私もいいよ~。みんな退屈そうだしね」


 こうしてへいげんちほーのフレンズ達による、にらめっこのバトルロイヤルが始まりました。


 勝負は熾烈を極めました。

 ルールを一番理解していないオーロックスちゃんが腹芸で笑わそうとしたり、姿を消そうとしたカメレオンちゃんが失格になったり、密かに針でつついて物理的に笑わそうとしたヤマアラシちゃんも失格になったり……。


 そして最終的に――。


『記念すべき100回目の勝者は……』


 全員が声をそろえて言います。

 

『かばん!』


「あはは……」


 そうです。

 なし崩し的に参加させられたかばんちゃんが、最後にハシビロコウちゃんとの死闘(ヘラジカちゃんとライオンちゃんは早々に敗退しました)を制し、見事優勝したのでした。


「しかしかばんがあんな面白い顔が出来るとは驚いたぞ」

「そうだねえ、なにか見本でもあったの?」

「あれは……」

 かばんちゃんはなんとも言いにくそうです。

「ほら、白状しちゃいなよ~」

「えっと、その、今までのアライさんを参考に……」


『ああ』


 全員が見事に納得します。


 100回目の勝負はこうして幕を閉じました。

 勝敗の結果? みんなが楽しめたらそれで良いんです。


 ちなみに後日――。


「ここにかばんさんが来なかったか!?」

『わっはっはっはっは!!!』

「なんでアライさんを見てみんな笑うのだー!!!!」

「なんでだろうねー。はははは」

「フェネックまで―!!!」



                                 おしまい

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勝負の行方? けものフレンズ大好き @zvonimir1968

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