タチね
右折の急ハンドルに身体が揺れた。ハッとなり今どこだととっさに確認した。まだ駅にはついてなかった。
一息ついて、また意識が飛んでいたのかと思った。
おかしい。こんなに眠くなるなんて今までにないことだ。病気なのか?
ぞっとして一瞬眠気が覚めた。こんな病気があるのか。考えてみてもそういう知識がないのでわからなかった。
バスが駅につくまで眠気は収まっていた。おれは乗り過ごすこと無くバスを降りた。
友人の角田とは駅にあるカフェで待ち合わせだ。しかし、座ったらまたあの眠気に襲われるかと思うと入れなかった。
そもそもなぜ今日待ち合わせしたんだろうか。頭が回ってない。思い出せなかった。スマホのメッセンジャーを確認した。
そうだ、おれは先週彼女にフラれて泣き言を角田に伝えたのだった。
「誰か良い子紹介しろよ」とメッセージを入れたら、承諾してくれた。それで今日昼呑みをしつつ会おうということになったんだった。こんな状態で会っても途中で寝てしまいそうだ。普通にしていても寝てしまいそうなのに、呑んだら確実に寝てしまう。頭がボーとしてきた。眠気がまた襲ってきた。
「よう!」と掛け声とともに肩に手をかけられた。この時は完全に意識がなかった。
「何だ、お前立ったまま寝てるのかよ?」角田だった。
えっ、また寝てたのか、気が付かなかった。
「器用なやつだな」と角田はキラキラした目でおれに言った。
「いや、すんごく眠くてな」と角田の手を肩から外しながら言った。
「春だもんなー、新しい恋を始めるにもなー」と角田はわざとらしい声で言った。
まだ頭が回ってないおれは何も言い返さなかった。
しかし、立ったままでも寝てしまうなんて初めてだ。座ると確実に寝てしまうので、立ち呑みで誤魔化そうとしたがこれでは油断できない。
大丈夫か、おれ?
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