ジャパリカフェは今日も大忙し

けものフレンズ大好き

ジャパリカフェは今日も大忙し

「忙しいねぇ忙しいねぇ」


 朝からアルパカちゃんはせわしなく働きます。

 『無事セルリアンを倒せたアンドかばん何の動物か分かっておめでとうの会』で様々なフレンズにお店の宣伝をして以来、多くのフレンズがジャパリカフェに来てくれるようになりました。

 それはアルパカちゃんにとって、とってもとってもうれしいのですが、予想以上に多くのフレンズが訪れ、毎日てんてこ舞い。

 そんな日々が続いたある日…。


「早く紅茶を出すのです」

「我々は喉が渇いているので」

 最近常連になりつつある博士と助手が、アルパカちゃんに催促します。

「待っててねぇ~、あとちょっとで出来るからぁ~」

「……ふむ」

 忙しそうに店内を動き回るアルパかちゃんを見ていた博士は、あることを思いつきます。


「これは……人手不足、いや、フレンズ不足ですね!」

「流石博士。私もそう思っていました」

「えぇ~どういうこと?」

 アルパカちゃんは紅茶を入れる手を止めないで、話を聞きます。


「ジャパリカフェには、連日多くのフレンズが訪れるようになりました。ですがそこで働く従業員は、いまだにアルパカしかいません。これではお店は喉がカラカラに乾いたフレンズばかりになり、そのまま死んでしまうのです」

「えぇ~!?」

 

 死んでしまう、というのは明らかに言いすぎでしたが、アルパカちゃんもずっと座って待っているフレンズに対しては、少し申し訳ない気持ちでいました。

 

「でも、紅茶入れられるのあたしだけだからぁ~」

「それ以外の仕事を他のフレンズにさせれば良いのです。紅茶を運んだり食器を洗ったり。つまりばいとを雇うのです!」

「やりますね助手、私も今それを言おうと思っていたのです」

「ばいと? って言うのはよく分からないけど、つまり他のフレンズに手伝ってもらえば良いのぉ?」

「そうです。ただし労働にはちゃんと対価を与えないといけません。この場合は、対価としてジャパリまんをあげればいいでしょう」

「ただしあげすぎるとひどい目に遭います。そのせいで、一時期ビーバーは私達の姿を見た途端、逃げるようになりました」

「3ヶ月分はふっかけすぎたのです……」

「そっかぁ~。でも誰に頼んだらいいんだろうねぇ?」

「そういうときこそこの言葉があるのです」

「あるのです」


『それは――』


『困ったときは猫の手も借りろ!』


 こうしてジャパリカフェは新しい従業員を雇うことになったのでした。



「スナネコです。よろしくお願いします」

「アルパカだよ~。ゆうえんちで会って以来だねぇ~。改めてよろしくねぇ~」


 アルパカちゃん、ネコと言われてすぐにサーバルちゃんが思いつきましたが、残念ながらまたかばんちゃんと一緒に旅に出てしまいました。

 ジャガーちゃんも毎日忙しく、他に近くにいたネコ科のフレンズがスナネコちゃんだったのです。


「えっとねぇ~。スナネコにはこれからばいと? っていうのしてもらうよぉ~」

「楽しみです!」

「やって貰うのは紅茶をテーブルに運んだり片付けたりすることと、食器を洗って貰うことだねぇ~。紅茶を入れるのはまだ難しいからあたしがするけど、できる限りあたしも手伝うよぉ~」

「これが紅茶ですか!」

 飽きっぽく好奇心旺盛なスナネコちゃんは、アルパカちゃんの話を最後まで聞かず、勝手に紅茶の入った缶をいじくります。

 スナネコちゃんをあまり知らないアルパカちゃんは、不思議に思いながらも素直に答えます。

「そうだよ~。そこから葉っぱをだしてぇ、そんでお湯を注いで紅茶を作るんだぁ~。お湯は熱いから気をつけてぇ」

「……はい」

 またすぐに飽きてしまったスナネコちゃんは、店内の別のものに興味を示します。

 その度にアルパカちゃんは説明するのですが、だんだん疲れてきました。


 そうこうしている間に、今日最初のお客さんが訪れます。


「いらっしゃ~い」

「いらっしゃいです」

「あら、今日は私が一番乗りじゃないのね。確かスナネコと言ったかしら」

 お客さんはジャパリカフェ最初のお客さんでもあったトキちゃんでした。

 同時に一番の常連で、歌のためにと毎日朝一番にカフェに来ていたのです。

「違うよぉ~。ばいと? をやって貰ってるんだぁ。えっとぉ、今からあたしが紅茶を入れるから、それをトキにまで持っていってぇ~」

「わかりました!」

 スナネコちゃんは自信満々に答えます。

 アルパカちゃんは安心して、いつもの手順で紅茶を入れました。


 するとどうでしょう。


「いないねぇ~」

「いないわね」


 ただ待っていることに飽きたスナネコちゃんの姿は、どこにもありませんでした。

 しかもアルパカちゃんは知りませんでしたが、バイトに満足してしまったスナネコちゃんは、そのままおうちに帰ってしまったのです……。



「……と言ったことがあったんだぁ~」

「なるほど」

「なのです」

 後日、再びジャパリカフェに訪れた博士と助手に、アルパカちゃんはその日の出来事を説明するのでした。

「それで結局そのあとどうなったのですか?」

「いやぁ、仕方ねーからトキに暇なときに手伝って貰うことになってぇ」

「そういうこと」

 この日もトキは忙しそうにジャパリカフェを動き回ります。

 一番長い常連さんなので、仕事内容はほぼ完全に把握していました。


「おかげで大分楽になったねぇ~」

「ふむ、アルパカ、助手、実は私は今回の件で分かったことがあります」

「な~にぃ~?」

「なんです博士?」

「元々鳥のフレンズは手が翼で使えなかったですが、こうしてフレンズ化し、飛んでいる最中も手が使えるようになりました。さらにアルパカは最初私達に頼り、最後はトキに頼りました。つまり――」

「つまり?」


「フレンズの場合、困ったときは猫の手より鳥の手の方が使えるのです!」


「流石博士。見事な推察です」

「そうだねぇ~」

「アルパカ、無駄話してないで早く紅茶入れてちょうだい。お客さんが待ってるわ」

「ああ、りょ~かいりょ~かい!」


 今日も大繁盛のジャパリカフェ。


 大変でもアルパカちゃんはちっとも辛くありません。

 誰もお客さんがこなかったあの頃と違い、忙しくてもこうして助けてくれるフレンズがいるし、困ったときは誰かに相談することも出来るのですから……。


                                  おしまい

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ジャパリカフェは今日も大忙し けものフレンズ大好き @zvonimir1968

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ