第10話 弾く以外のギターの楽しみ方
某オークションでアコギを入手した。
モーリスという日本のブランドの70年代の初心者用ギターだ。
二千円だった。
エレキギターと違って弦が太くて、張力もある気がする(気がするだけだと思う)。
しっかり押さえないと音が出ない。こりゃ大変だ。
と、そんなことより、問題は音の大きさだった。
でかい。
ちょっと家で気軽に弾ける大きさじゃない。
上手きゃまだいいのだろうけど、下手くそなギターが近所中響き渡るというのはいただけない。
迷惑というより、オッサンのプライドの部分で。
あまり弾く機会にも恵まれず、ハードケースに収まったままになっていた。
近所のバーで知り合いになったプロのギタリストの方が、新しく教える生徒さん用に某オークションで安い出物はないかというので、それならお蔵入りしている僕のありますよ、ということで、ホント安物ですからねとお譲りした。
そのギタリストの方がメンテナンスしてもらっている工房で調整したところ、驚くほど良いギターになったらしく、ご本人が欲しいくらいだと絶賛してらした。
嬉しいというか、虚しいというか、何だか複雑な気分だったが、喜んで頂けたならよかったのだろう。
僕は当たりを引きやすいらしい。
70年代のアコギで、これまた放っておかれていたにもかかわらず、肝心な部分の状態は良かったらしい。
やはり古いギターは、状態さえ良ければ新しいギターより良く鳴る。
先日、そのギタリストの方がレコーディングやライブで使っているアコギを弾かせて頂く機会があった。
初心者に毛が生えたようなど素人に触らせてくださるだけでも有難いというのに、弾かせて頂けるなんて!
衝撃だった。
弾きやすい…。エレキギターと変わらない弾き心地。
メンテナンスとか調整って大切なのだと痛感したのだった。
その後、五年間で三本のエレキギターを入手した。
なぜかみんなお嫁に行ってしまって、現在手元にあるのは最初のレスポールだけだ。
その入手した三本は、全てテレキャスターを探していたというのに、なぜか入手してしまった違う形のギターだ。
入手して、メンテナンスして、お嫁に行くという、なんのこっちゃの悪循環。
楽しいのだけれどね。
うち二本はヴィンテージギターだ。
弾く楽しみもあるけれど、新しいギターと触れ合うことも楽しい。
エピフォンのSGは弾いてみて自分には合わないと思った。
ピッキングのポジションが丁度ピックアップの部分にきてしまって、カチカチ煩いのだ。
まあ、下手くそなだけなのだけれど。
AriaProⅡは重くて大きくて、扱い辛かった。木目が綺麗で、格好良かったのだけれど。
アイバニーズのセミアコなんていうのも入手した。
これが良いギターだった。
大きさも良いし、弾きやすいし、ホローボディ(ボディが空洞になっている)なので、アコギよりは小さいけれど、普通のエレキと違って周りにもしっかりと音が聴こえる。
マイクなしのちょっとした弾き語りに重宝した。
これは地方に転勤するという先輩がご所望だったので、泣く泣くお譲りした。
嫁入りした三本もストラト同様、バリバリの現役で活躍している。
楽器は弾いていないとダメになるというし、弾かれる機会に恵まれているなら嬉しい限りだ。
現在、切実にテレキャスターが欲しくて探している。
やはり新しいものではなく、古いものが欲しいと思う。
できればフェンダーが欲しいけれど、高いんだよなぁ。
でも尖ったヘッド嫌いだから、スクワイヤーってことになるのかなぁ。
こんな楽しみ方をできるのも大人だから。
もし家に古いギターが眠っているのならば、一度メンテナンスに出すことをお勧めする。
昔よりも良い音がするかもしれない。
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