第4話 喫茶店
田沼耕作はその時頭が真っ白になった。こういう経験は初めてである。おそらく世界中を探しても誰も経験したことがないのではないだろうか?いや、現代日本では経験した人はいないということで過去の歴史に於ける違う地域、例えば中世ヨーロッパ、あるいは中近東あたりに事例があるかも知れない。
小説、アニメではよく異世界に転生するとか転生しなくてもそのままの姿形、記憶を持ったまま飛ばされる話があるようである。
そこでこれからの身の振り方としてまず心を落ち着けることが肝心だと思った。それに一番いい場所としてまず思い浮かんだのは喫茶店である。ちょうど今いる別の会社になってしまったビルの向かい側には幹線道路を挟んで確か喫茶店があった筈である。
エレベーターの下りボタンを押して早く来てくれないかと心待ちになる。その間知っている人に出会うことはなかったが、たとえ自分が相手を知っていても向こうは知らないと言うかも知れないので余計な気苦労をせずに済んだ。
エントランスを抜けて横断歩道で信号待ちをする。こちらから見ると確かに喫茶店はあった。しかしどうも何だかちょっと雰囲気が違っているようである。
とりあえず、信号が青に変わったのでその喫茶店を目指すことにする。店の前に着き店名を見ると「PLANET WORKS」という文字が目に入る。英語の店名だろうか?アメリカのハリウッド映画に出てきそうな雰囲気である。それに外に面して一面が硝子張りで自分の背の高さよりもかなり高くなっている。中にはいったらガンマンとかがいていきなり発砲してこないだだろうか?
恐る恐る中に入ってみる。すると、店内はかなり広くて奥の方にカウンターがありその上にはメニューが書いてあるボードがあった。とりあえず、空いている席を探してみることにするが万が一に備えてなるべく出入口に近い所に座った。
しかしいつまで待ってもウェイトレスが注文を取りにこないようである。なんてサービスの悪い店なのか!あたりを見回すと他の客のテーブルには飲み物があるようである。まあ、このまま注文を取りに来なくてもそれはそれでいいかも知れないと思った。沈思黙考するために入ったのが目的で別にコーヒーが飲みたかったわけではないからである。
さて、これからの行動としてはいったんおんぼろアパートに帰り大家さんに連絡を取ることが先決だと思われた。なにはともあれ住む所を確保しなければ今後の対策も立てられないからである。後は今持っている貯金がどれぐらいあるのか銀行に行き至急確認する必要がある。実質、仕事がなくなりこれは失業したのと変わらないのでこれから何か月収入がなくても生活できるか考えておいたほうがよさそうである。
考えがまとまったので長居は無用とばかりに急いで席を立つ。帰る時にカウンターの前を通ると客がその前にいて店員からコーヒーなどの飲み物を直接受け取っていた。しかしまあ随分と手抜きな喫茶店である。文句を言う人はいないのだろうか?それとも奥のほうに用心棒がいてライフル銃を構えているので怖くて言えないとか?
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