第10話

 魔管の修正それは逆流する魔力や魔管が詰まっているところに魔力を流し魔力が正しく流れるよう修正するのだが、もし魔力を逆流している部分や詰まっている部分に魔力を強く流しすぎると魔力暴走を起こしている者のは命に関わるほど酷い暴走を起こし修正を行っていた者は暴走に巻き込まれ酷い怪我を負うか命を失う場合もある。


「わかった。やってみる」


 そのようなことを知らないシュウは何も気負うことなく返事をした。そして、今もなお苦しそうに横たわるリリアの元に行き片膝をついた。シュウはリリアに近づいたことでリリアの容貌ようぼうを見ることができた。王妃のレリアと同じく金髪で顔は王妃に似ているがまだ幼さを残す顔立ちをしているのできれいというよりはかわいらしいという顔立ちだ。そのことからとしは12、3歳ほどではないかと思われる。


 リリアはシュウが近づいてきたことに気がついたのか閉じていた目を開けシュウを見た。


「・・・あなたは、はぁ、誰ですか?」


 苦しそうにシュウに誰であるか尋ねてきた。


「お前の病気を治しにきた者だよ」


「はぁ、無理ですよ。はぁ、この国最高峰の医師でも、はぁ、わからいっと言った病気です。治せる、はぁ、わけないです。私は、はぁ、もう助からないのです」


 シュウが病気を治しに来たと聞いたリリアはもう諦めた表情と声音こわねで言った。それを聞いたシュウはふっと不適に笑いリリアの頭を撫でた。


「いいや、治すよ」


 そう言いシュウはリリアの手をとり両手で包み込むように握った。そして、目を閉じた。その行動にエルは驚いた。通常魔管の修正は魔視により魔力の流れを視認しつつ魔力の強弱を決め魔力を流すのだが、シュウは魔視を使わずつながれた手から感じる魔力のみで魔力の強弱を決めるようだ。これは普通の魔法使いの魔力感知能力程度では到底不可能なことなのだがシュウはそれを知らずにやってのけようというのだ。


 これは先程述べたシュウが魔法や魔力との相性、魔法適正がかなりよいっという事につながるが魔法に関してはシュウはいろいろなファンタジー系の本を読んでいる中で魔法が登場するがそれぞれの本に独自の魔法理論で書かれているため『これが魔法!』というよりは『魔法は現実ではできないことができる手段』という考えを持っている。それと魔力に関してなのだが、これはシュウの性格が関係している。シュウは基本めんどくさがりだが興味を持ったことに関してはとことんやるのでその興味を持ったものの中に手先が器用でないとできないものがあったりしたので手先が器用なことが起因して魔力の操作はそこまで難しく感じなかったのだ。


「ふ~」


 シュウは息を吐き集中力を高めリリアに魔力を流す。そして、魔力の流す量に細心の注意をはらいつつ慎重に魔力を流す。魔力が逆流している部分は魔管を傷つけないよう一気に魔力を押しもどすのではなくゆっくりとゆっくりと押しもどしていく。詰まっている部分は少し強めに魔力をなしして強引に魔力を流すが、強く流しすぎると魔力が一気に流れていき危険である。それらすべてが糸を針の穴に通すほど、いやそれ以上に難しいことをシュウはしているそのようなことをシュウはなんとなくしている。


「んっ」


 シュウが魔管の修正を行う中リリアは頬上気させつつ少し艶かしい声をあげている。まだ幼いが美しく妖艶なレリアに似ているのでその姿は少し色っぽい。だが、シュウは目を閉じ集中しているのでその姿も声も気づくことはなかった。


~~~~


 シュウが魔管の修正を開始してから1時間ほど経った。


「あ゛~、疲れた~」


 疲れきった声とともに後ろに倒れるように体を傾けたがエルがすばやくシュウの体を抱きとめた。


「お疲れ様です、シュウ様」


 シュウを抱きとめたエルはそのままシュウを膝枕し寝かせた。


「終わったのか!」


 リリアの無事を祈るように見守っていたアレクセンたちがシュウのもとに寄ってきた。


「たぶん大丈夫だと思いますよ~、な、エル」


「はい、きれいに修正できております」


 シュウとエルの言葉を聞きそしてリリアの気持ちよさそうな寝顔を見たアレクセンとリリシアは安堵したように息を吐き、レリアは泣き崩れた。


「娘を助けてくれて感謝する、ありがとう!」


「あ~、俺もう一年分は働いたわ、これから一年だらだらすごすわ絶対。寝たり、本読んだり、ゴロゴロしたりしてすごす」


 アレクセンがシュウに感謝の言葉を述べるとシュウは誰に言うでもなくだらだろしたいと公言した。それを聞いたアレクセンは苦笑をもらした。


「では、私が御そばでご奉仕させていただきますね、私一人で」


 そして、エルはどこか怪しげに微笑みシュウの頭を優しく撫でた。


「ガ、ガブリエル殿、いつまでもシュウをそこに寝かしておくわけにはいかないだろ。部屋を用意するからそこでくつろいでくれ」


 エルの雰囲気に若干引きぎみにアレクセンはそう提案した。


「そうですね。では、シュウ様少し失礼します」


 エルはシュウをお姫様抱っこして運ぶようだ。シュウもお姫様抱っこに若干抵抗があるものの疲れているからだろう何も言わずエルに任した。そして、先に出ていたアレクセンは外に待機していたメイドに部屋に案内するように指示を出していた。


「それじゃあ、シュウ、エル殿、このメイドについていってくれ」


「お任せください、陛下。それではこちらにどうぞ」


 指示を出されたメイドはシュウとエルに頭を下げついてくるよう言った。エルはシュウを抱えたままそのメイドについていった。


 そして、少し歩いたところでメイドは足を止めた。


「こちらになります」


 メイドがドアを開いたのでエルはその部屋に入った。そこは応接間のようになっており机とソファーが置いてあった。


「それでは、お茶をご用意します」


「いえ、それは私が用意します」


 ここまでつれてきてくれたメイドがお茶を準備しようと声をかけたがエルがそれを断った。そして、エルはシュウをソファーに寝かせ机とティーセットをどこからともなく取り出した。断られたメイドは一瞬呆けてしまったがさすが王城で働くプロ、すぐに気を取り戻しドアの横に待機した。少しして紅茶が入ったのでシュウの前に紅茶を置きそしてお茶請けとしてクッキーを出した。


 そして、エルはソファーに座るでもなく後ろに控えるわけでもなくシュウを膝枕した。


「シュウ様、こちらのクッキーをお召し上がりください」


 エルはシュウを膝枕したまま茶請けのクッキーを手に取りシュウの口に運んだ。シュウは特に何もいわずクッキーをエルに食べさせてもらった。すると、クッキーは作りたてのように温かくサクサクしていた。さらに、クッキーは甘く魔管の修正で集中していたシュウの疲れた脳を癒した。


 そこにエルはシュウがクッキーを飲み込んだのを確認して紅茶を差し出した。シュウは少し頭を動かし紅茶を飲むと飲みやすいように調節された温度とクッキーの甘さを中和させるほどよい苦味が口の中に広がる。


 エルはシュウの考えていることがわかるのかシュウがクッキーを食べたい紅茶を飲みたいと思った瞬間口元に持ってきてくる。それにより、疲れているシュウはエルの行動とエルの出した紅茶とクッキーで癒されていた。それを感じ取っていたエルはとても嬉しそうな顔をしていたがシュウは紅茶とクッキーのほう、つまり横を向いていたのでエルの顔を見てはいなかった。

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