第3話
「ようこそ、『Another World Online』へ」
目を開けた宗の前には腕を広げ宗の事を歓迎するようにしている女の子がいた。
「私は最初のナビゲートをさせていただくナビ子といいます」
「・・・そのままだな」
自己紹介をしたナビ子に対してゲーム製作人へのツッコミが自然に出た。
「はははっ・・・それではキャラクターメイキングを行います。まず容姿の設定を行います。容姿は最低限顔をいじってください」
ナビ子は宗のツッコミに苦笑いをした。そして、手を軽く振ると宗の目の前にウィンドウが出てきた。そこに宗の全身が映し出されていた。
「う~ん、髪を肩くらいまで伸ばして色を白くして、目を金色にして、顔はほんの少し目をパッチリとしてっと・・・身長はこのままでいっか」
顔や髪を変えた宗だが身長はそのままにした。宗の身長はかなり小さい。160cmあるかないかだが宗は別にこの身長にコンプレックスなどもっていない。なので、身長は変えずそのままにした。
めんどくさがりの宗が意外なほどに容姿設定に力を入れたのはあるマンガにでてくるお気に入りのキャラに似せるためだった。そのキャラは宗と同じく男なのだが女顔で宗と性格が似ているので共感できる部分が多く気に入っているのだ。
「はい、それで大丈夫です。次にお名前を入力してください」
「・・・シュウでいいか」
名前を考えるのがめんどくさいかった宗はキャラクター名は本名をカタカナにしただけだった。
「次に職業とスキルをお選びください」
これはすでに決めていたシュウはすぐに選ぶことができた。
「・・・えっと、本当にこちらでよろしいのですか?」
シュウが選んだ職業とスキルを見たナビ子が戸惑った表情をしていた。
「何か問題があるの?」
「え~、シュウ様が選んだ職業は
「あ~、大丈夫。俺、戦闘する気ないから。寝たり本読んだりするだけだから」
心配するナビ子の言葉に軽く返すシュウ。
「はあ、それではシュウ様の職業は
「ん、大丈夫」
「では、これでキャラクターメイキングはこれで終わりです。次にチュートリアルがありますがお受けになりますか?」
シュウはチュートリアルという言葉にめんどくさそうにした。
「いや、いい。受けない」
もともとこういうゲームをしないシュウだがチュートリアルが少し時間がかかるのを知っていたので、チュートリアルをとばすことにした。
「わかりました。これから最初の街『ファースト』にお送りします」
ナビ子はそう言うと手元にあるウィンドウを操作した。すると、シュウの足元が光りだした。
「それでは『Another World Online』をお楽しみください」
「うん、いろいろありがとナビ子。いってきます」
シュウは自分を心配してくれアドバイスをくれたナビ子に感謝していたので、いつも眠たげな表情に少し笑顔を浮かべた。
「ッ!・・・い、いってらしゃいませ」
ナビ子は顔を少し赤く染めつつシュウに返した。そして、シュウは光に包まれ消えていった。
「・・・あの笑顔は反則ですぅ~」
ナビ子はそういいつつ赤くなった顔でシュウのいた場所をしばらく見ていた。
~~~~
「おぉ~」
シュウが目を開けると広場のようなところにいて、目の前には本などで題材にされているファンタジーの世界が広がっていた。いままでフィクションの中だけだと思っていた世界にそれを見たシュウは感動して声が出てしまった。
ピコンッ
シュウがファンタジーの世界に感動していると電子音と同時に目の前にウィンドウが開かれた。
「?」
シュウがなんだと思っているとウィンドウにはメッセージ画面が開かれていた。そこには、『ヤマト』という名前と『わるい』という題名のメッセージがあった。ヤマトという名前にピンッときたシュウはすぐにメッセージを開いた。
――わるい!ベータテストの時の仲間から誘われてちょっと断れないから宗との約束なしにできないか?
そのメッセージを読んだシュウはすぐにメッセージを返した。
――気にするな、俺は自由にやってるからヤマトは仲間と遊べよ。・・・今度なんかおごれよ
――すまんな。なら今度うみゃい棒買ってやるよ
シュウがメッセージを送るとすくに返ってきた。うみゃい棒はシュウが好きな駄菓子だ。10円と安く手軽に食べられるので本を読みつつ食べるのがシュウは好きだ。
「さてと、これからどうするか?」
ヤマトとのメッセージのやり取りが終わったシュウは何をするか考える。本当はヤマトがいろいろ教えてくれた後何かしらしたいことができるだろうと考えていたシュウはこれから何をすればいいかわからなかった。
「・・・そういえば図書館があるっていてたよな」
ヤマトが学校で話していたことを思い出したシュウはそこに行くことに決めた。さっそく図書館に向けて歩き出したシュウは広場を後にしようとしたが・・・。
「・・・図書館ってどこだ?」
広場から出る手前で足を止めたシュウは図書館の場所がわからないことに気づいた。そして、どうしようかと考えているとどこからかおいしそうな匂いが漂ってきた。
「スンスン、なんかいいにおいだな」
その匂いに導かれるように足が動いていったシュウはある屋台の前にいた。
「おう、いらっしゃい」
屋台で何かの肉を串に刺したものを焼いていたおっちゃんが話しかけてきた。
「あ~おっちゃん一本ちょうだい」
「まいど、100ゴールドな」
肉の焼ける匂いにやられ一本買うことにしたシュウだがおっちゃんの言葉に固まってしまった。
――お金ってどうやって払うんだ?
お金の払い方がわからなかったシュウが固まっていると目の前にウィンドウが現れた。
『100ゴールド支払いますか? YES/NO』
そうかかれているウィンドウを見たシュウは
「ありがと」
おっちゃんにお礼をいい串焼きを受け取った。そして、頬張ったシュウは目を見開いた。
「ッ!うま、うまいよおっちゃん!」
ちょうどいい焼き加減と甘口のたれが見事にマッチした串焼きにシュウはいつもより若干大きな声が出た。
「ありがとよ、譲ちゃん」
シュウの言葉を聞いたおっちゃんは照れくさそうな顔をしつつ頬をかいた。
「・・・ッゴク、うまかったよおっちゃん。それと俺は男だよ」
「・・・まじかよ。悪かったな坊主」
シュウの男発言に驚いた顔をしシュウに謝り訂正してきた。
「うん。あ、そうだ。おっちゃん図書館の場所知ってる?」
「図書館?それならこの道を真っ直ぐ行けばでっかい建物があるからそれが図書館だ」
先程こちらに来た道の反対のほうを指差しつつおっちゃんは言った。
「そっか、ありがとおっちゃん。また来るよ」
「おう、いつでも来い」
おっちゃんに別れを告げおっちゃんが教えてくれた道を歩いていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます