・弔いの極夜・
そのときの夕映えは、宵闇を思わせる色で、深く濃く、沈んでいた。
守りの要をひとつ失った彼らは予想以上に、消耗してしまう。
だが、弱みを見せることは出来ない。
切り替えて、突き進むしかない。
彼らにとってかけがえのない、大切な友のためにも。
弔いの鐘を合図に。
星の運命と、ひとつとなって。
敵軍を退けて、安泰の日々を確信した後、揃って彼の元へと駆けつけたときには、既に。
『おめでとう』とも『ありがとう』とも。
彼らしいねぎらいの言葉は、二度と聞くことは出来なくなっていた。
「―指揮官殿、あいつは・・・なんで、コールドスリープに入らなかったんでしょうか」
横たわるなきがらを前にして、ここに居る誰もが抱く疑問をぶつけた。
「彼が、望まなかったからだ」
「治る見込みはあったんだろ??」
「あったら、素直に眠りに付いたと思わないか?」
「・・・・・・」
「―皆が苦しんでいる時に、自分だけのうのうと寝て居たくない、とは言っていたっけな」
「・・・それと、」
背後の声に、一斉に振り返った。
「・・・これは―皆さんの名誉の為に言わないでほしいと頼まれていたのですが・・・万が一、負け戦になってしまった場合、生きながらえることに意味がない、と。それから、」
“勝ち戦になったなら、尚更。置いていかれたくないんだ。皆の話題に、さ”
「・・・あいつらしい、強がりではあるよな」
「さみしがりやだったもんな、アイツ」
「それじゃ、尚更、」
―独りで逝くことは、想像以上に、辛かっただろう。
ひとり、ふたり、と。
俯き、目をそらし始め、やがてどこからともなく。
すすり泣く声が漏れ始めた。
「たぶんな・・・あの頃に、みんな、持って行かれちまったのかも知れない」
かつて英雄と呼ばれた男が、しみじみとそう言った。
その年を境に、この星は急速に力を失っていく。
「つながっている、って言うのかな・・・そういうものが、断ち切られたっていうか・・・」
実感としての手応えが、無くなったように思えたという。
これら、星全体を覆いつくすような失意の時代のことを人人は、
“弔いの極夜”
と呼び。
支配星系による一方的な圧制に、耐え忍ぶ日々を過ごしたという。
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