命の声。

にわとり・イエーガー

第1話

ドオン!


 それは嵐のようであった。


 稲妻が舞い散り、風吹きすさび、岩くれが落ちて来る。これこそ天変地異と言うべきものであろう。


 そしてなんと土が盛り上がる。


 モグラではない。ミミズでもない。プレーリードッグなどもってのほか。


 なにせ奴は青い。オオカミか、それともクジャクか?


 だがそれでもないのだ。


 なにせ奴は丸い。ネコが寝転がっているような、カタツムリが殻に閉じこもっているような。


 そして浮いている。雲のように飛んでいる。フクロウほどの音を立て、アリの速度で動き回る。


 だから奴はあの生き物でしかない。


 セルリアン。



 芽生えた本能と空腹感は、食欲を刺激する。生まれたばかりの意識は獲物を求めて奔る。


 母は無い。父は居ない。独りで生まれ一人で育つ生命に、仲間は要らない。エサと敵。世界にあるのは、その二つだけ。


 痛みは知らない。恐れは覚えない。求めるものは光。


 知らぬはずの母なるマグマを覚えている細胞が蠢き食らうのだ。熱を。光輝を。あいつらを。


 水は嫌いだ。冷たいから。


 海は嫌いだ。広いから。


 己が消えてしまうから。


 友は無い。肩寄せあっても共ではない。硬い己は手の取り方を知らず、柔らかな己は受け止め方を知らない。


 己は弱い。あいつらのように堅くない。カラフルじゃない。笑顔じゃない。


 仲間が、居ない。


 土よ。溶岩よ。マントルよ。


 己は、なぜ生まれた。


 なぜあいつらを食ってしか生きられない。


 食ったら、お喋りが出来ないじゃないか。



 強き光よ。時が経つごと満ち消える貴き光よ。己に力を。


 あいつらを食わなくても生きられる力を。


 友達を作れる己が、欲しい。



 己はセルリアン。


 フレンズを食ってしか生きられない、ただのけものだ。

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