第8話 図書館へ行こう!


「忘れないわよ……じゃあ、それまでは普段使わない魔力を保存する練習をしましょうか」

 言いながら私は昨夜家から持って来た荷物を漁った。

 以前アンナリーザのために作ったものがこの辺にあったはず……。

「魔力を保存?」

 アンナリーザは不思議そうに首を傾げる。


「そう、魔力はね、毎日限界近くまで使う事で、魔術師の扱える魔力量や魔力の保有量が増やせるの。でも、毎日限界まで魔法を使うのは大変だし、後から魔法を使いたくなる事もあるでしょう? だから、この人工魔法石に普段から魔力を溜めておくの」


 ああ、あったあったこれだ。

 私は荷物から発掘した自作の六芒星型の人工魔法石をペンダント型にした物をアンナリーザの首にかける。


「わあっ! これ可愛い」

 アンナリーザはペンダントを見るなり嬉しそうにはしゃぐ。

 気に入ってくれたようで何よりだ。

 これから毎日身に付ける物だから、愛着を持てるのがいいだろうと頑張って加工した甲斐があったというものだ。


「しばらくは毎日この魔法石に自分の魔力がすっからかんになるまで魔力を溜めなさい。一ヵ月後には相当溜まってるはずだから、それを使えば今までよりもすごい魔法が使えるわ」

「すごい魔法!?」

 私の言葉にアンナリーザの目が輝く。


「溜めた魔法の使い方もその時教えるから、今日は魔力の溜め方を教えるわ」

「そういえば、ママが最近つけだした首飾りも魔法石?」

 私の首元に光る魔法石を指差してアンナリーザが首を傾げる。


「ええ、私の場合はアンとは逆の理由で、小さい魔法石一つだとすぐに一杯になってしまうから最近は家の大きな魔法石にまとめて溜めていたのだけれど、この前出先で魔法を使い過ぎてしまって、やっぱり万が一の為に持ち歩くことにしたの」


 そう、私は自力である程度の大きな魔法も使えるようになってからは夜寝る前に家に置いた自分とほぼ同じ背丈の巨大な人工魔法石にその日の余った魔力を注ぐだけの生活を送っていた。

 だって自力で十分困らないくらいに魔法を使えたから。


 だけどこの前、魔物に襲われてる村人を助けた日、予想外に魔力を使い果たした私は、もしもの時のために非常用の魔力を込めた人工魔法石を久しぶりに身に付けるようになった。

 あと、魔法の発動効率を上げて消費魔力を抑える機能しかついていなかったロッドにも、少し大きめの人工魔法石を新たに仕込む事にした。


「つまり、自分の魔力を使いきった時でも、それがあればすぐにまた魔法が使えるって事?」

「そうよ」

「そっか、魔法石って便利なんだね」

 自分の首から下がった人工魔法石をまじまじと見ながらアンナリーザは言う。


「特定の用途にしか力を発揮しない天然の魔法石と違って、人工の魔法石の方が最初から固有の魔力が内包されてない分、こんな風に魔力を溜めておくにはむいているのよ」

「ふうん? じゃあこれはママが作ったの?」

 ペンダントを私に見せながらアンナリーザが私に尋ねてくる。


「ええ、気に入った?」

「うん! ママありがとう!」

 アンナリーザが嬉しそうに私に抱きついてきた。

 どうやら機嫌はすっかり直ったらしい。


「ねえママ、ところで私、家にあった本は全部読んじゃったから、新しい魔法の本を読みたいな」

 抱きついたまま、私の胸元からアンナリーザが顔を上げて私を見上げてきた。

「そうねえ、じゃあこの町の図書館にでも行きましょうか。色んな本を読めるわよ」

「わあい! 図書館楽しみ!」


 私が提案すれば、アンナリーザは随分と嬉しそうにはしゃいだ。

 いつの間に家にあった本を全て読破したのだろうと思ったけれど、考えてみれば私はよく仕事で家を空けていたし、周りに何も無い森の奥ではアンナリーザの娯楽は魔法と、その魔法の知識を与えてくれる本だけだったのかもしれない。


 本なら魔道書や最新の魔法の研究に関する論文をまとめたものまであふれ返っていたし、アンナリーザの興味も自然とそっちへと向かったのだろう。

 なんにせよ、アンナリーザが魔法を学びたいというのは大歓迎だ。


 将来、私の研究を引き継ぐ立派な魔術師になってもらうためにも、その辺の協力を私は惜しむつもりはない。

 いっぱい勉強してたくさんの魔法に関する知識をつけて、あらゆる魔法を身に付けてほしい。


 だから私は上機嫌でこの地域では一番の蔵書数を誇る図書館に連れて行ったし、娘にせがまれるがままに特別な許可証を持っているか、Aランク以上の魔術師でないと入れない、専門の魔術書の置かれたエリアにもアンナリーザを同行させた。


 …………それが間違いだった。

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