迷探偵アミメキリンのじけんぼ

偃月桜

消えたカップのなぞ

「わかったわ!この事件の犯人が!」




太陽が少し西に傾きだした、ゆうえんち。私、アミメキリンは椅子に座り一人ジャパリまんを齧っていた。かばんちゃんはサーバルと一緒に島の外に行ってしまった。[ほらーたんていぎろぎろ]の次巻はまだまだ先らしい。探偵が必要な事件は起きない。要するにひまなのよ。

別のちほーに行ってみようかしら。図書館ではかせにお話し聞かせてもらおうかしら。推理の勉強になるかもしれないし……。

「ありぇー?なんでやろぉ?」

比較的静かだったゆうえんちの静寂は唐突に破られたわ。声の主はそれまで紅茶の準備をしていたアルパカさんよ。


これは……事件の匂いがするわね……探偵の出番が来たのよ!

「どうしたの、事件?何があったのかしら、事件?探偵が来たわよ!」

颯爽とマフラーをたなびかせ探偵登場。かっこいいでしょ。

「探偵さん? いんやぁ、そんな事件って程でもないんだげど 紅茶のカップが一つ足りないんだわぁ~」


これは立派な事件よ!誰かがカップを盗んだに違いないわ。ここは私の推理で犯人を見つけだすしかないようね……。


何かあったのかとゆうえんちにいたフレンズが集まって来たわ。

どうしたんだい? だいじょうぶ? さっきアライさんが紅茶持ったまま あとらくしょんに乗りに行ってたよ 紅茶ください! これおいしいっすね! ほんとお?褒めてもらうと照れるわぁ~


みんな事件が起きて混乱してるわね。冷静に、探偵として最初にやるべきことは状況確認よ!

「まず、事件の起きた状況を話してもらえるかしら?」

アルパカさんは戸惑いつつも話し出した。

「ええっど みんなのカップが空になって来てたがら、一度集めておかわり入れようとしたら一つカップが足りなかったんだぁ~」

ふむふむ……アルパカさんのしょうげんを元に推理すると……犯人はこの中にいるわ!そしてここにいるフレンズから……。

「わかったわ!この事件の犯人が!」


えー! なんだって! すごーい! ジャパリまんおいしー 歌ってもいいかしら? また何か落ちて来たぞ!


「犯人はあなた! プレーリードッグね!」

「ええっー! な、なんで私が! 盗んでなんかいないですよ!」


ふふふ……この反応、追い詰められた犯人そのものだわ!

「あなたは盗んだカップを穴を掘って隠したのよ! きっとみんなをびっくりさせて目立ちたかったのが動機ね…… さぁカップを返しなさい!」


そんな! ほんどぉ~? 地面にあるの?

アライさんだいじょうぶ? ずいぶん高いところから落ちたね はかせが調整したって言ってたのに……なんでなのだ…… カップ割れてない?


みんな私の名推理に驚いているわね。たまらないわ!

「いやいやそんなことしてないでありますよ!

大体目立ちたいってそんなことでしないでありますよ!」


おかしいわね……名探偵のこの私が間違えるはずがないわ!

「あなた、嘘をついているわね!さぁ本当のことを吐きなさい!」



よがっだ~カップ無事で アライさんも平気でよかったね アライさんは強いのだ! 解決できてよかった~ お祝いしよう! わーい!!



「ほら!解決したみたいですし、もう行くでありますよ! 私じゃなかったですよ!」



くっ 今日はどうやら読み違えたようね…… 名探偵も間違えることはあるのよ!


「確かにあなたが犯人ではなかったようね。ごめんなさい……でも忘れないで、私は探偵よ!」


「まぁ みんなでお祝いしますでありますよ!」


紅茶どうぞぉ~ どうぞぉ~ 一時はどうなるかと思ったでありますよ~ 探偵も失敗するのよ! アミメキリンさんは探偵なの? お祝いの歌、歌うわ がんばれー



今日は間違えてしまったわ。でも楽しかったし、いいかしら……。 プレーリードッグさんも[ほらーたんていぎろぎろ]読んでいたし。 お友達が増えてよかったわ。 ふああぁ眠くなって来ちゃったわね。明日こそ事件を解決するのよ! じゃあおやすみなさーい。






「そのいでたち……そうしてこの暗い場所にいる習性、時間、これらの証拠からあなたが何の動物かお見通しよ! あなたコウモリね!」

「全然違う!! 見ればわかるだろ!!ツチノコだよ!!」

「おかしいわね……あなた本当のことを…」

「落ち着くんだよ!! てかお前!そこ閉めただろ!こんにゃろー!」


ふむ…… どうやら違ったみたいね…まぁこういうのこともあるわね。


「出口をまた探さなきゃ……くそぉ~」

「探す?この名探偵アミメキリンに任せなさい! 見事見つけてあげるわ!」

「お前のせいでこうなったんだろ! うぎゃぁー」





「ここは素敵な場所ね~」

「そうだろうそうだろう!ここは人を楽しませるために作られた場所なんだ! 地図には載っていないんだぞ!」

「地図にない迷宮……かっこいい響きね…何か事件はない?解決するわよ」

「お前みたいのが来たことが事件だよ!!」





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

迷探偵アミメキリンのじけんぼ 偃月桜 @berettamaru9

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ