かばんちゃん、博士にしょうせつっていうものがどんなものか教えてもらおうよ!
右手
第1話
ぼくが小説をかこうと思ったのはオオカミさんがきっかけでした。ぼくが「オオカミさんは漫画をかくことができるなんてすごいですね」と言ったときに(サーバルちゃんも「これをかいたの?すごーい!」と言っていました)、オオカミさんが「そんなに難しいことじゃないんだよ。かいてみたらどう?」と言いました。それでぼくはオオカミさんから漫画のかきかたを教えてもらったんですが、なかなかオオカミさんみたいにうまくかくことはできませんでした。
「むずかしいですね…」とぼくは言いました。
「そうだよ。どうやったらそんなにじょうずにかけるのー?」とサーバルちゃんも言いました。
オオカミさんは「それじゃあちょっと見ていてごらん」と言って、漫画をかきはじめました。さらさらとペンを動かして、紙の上にはぼくやサーバルちゃんの絵が次々とかかれていきます。ぼくとサーバルちゃんは「うわぁ!」と言いながら、オオカミさんが漫画をかいていくのを眺めていました。
「どうだい?そんなに難しいことじゃないだろう?」とオオカミさんは言いました。
「そんなことないよー」とサーバルちゃんは言いました。
「そうですよ。ぼくたちはそんなふうにはかけません」とぼくは言いました。
「そうかい?」と言って、オオカミさんはぼくとサーバルちゃんのほうを眺めました。そのあと少しオオカミさんはなにかを考えているようでした。「そういえば、きみは本を知っているんだろう?文字を読むことができるなら、本をかいてみるのはどうだい?」とオオカミさんはぼくにむかって言いました。
「本ですか?」とぼくは言いました。
「そうだよ。本と言ってもいろんな種類があってね。本の中には小説というものもあるんだ」とオオカミさんは言いました。
ぼくは小説というものがどんなものなのかよくわかりません。サーバルちゃんもぼくと同じだったみたいで、ぼくの代わりにサーバルちゃんが「しょうせつってなぁにー?」とオオカミさんに聞きました。
「小説というのはね、絵ではなくおもに文字を使って作られた本のことだよ」とオオカミさんは言いました。
「へぇー」とサーバルちゃんは言いました。
「それはどういうふうに作るんでしょうか?」とぼくは質問をしました。
「それは私にもよくわからないんだ。もし興味があるようなら博士に尋ねに行くといいよ」とオオカミさんは教えてくれました。
「かばんちゃん、博士にしょうせつっていうものがどんなものか教えてもらおうよ!」とサーバルちゃんは言いました。
「うん!」とぼくは言いました。
それからぼくとサーバルちゃんは一緒に、博士のいる図書館まで行くことにしました。
「小説?もちろん知っているのです。我々は賢いので」と博士は言いました。
「しかし小説について教えることはエネルギーを使うのです。我々は賢いので」と助手は言いました。
「しかし料理があれば小説について教えることができるかもしれないのです。我々は賢いので」と博士は言いました。
「ええー!」とサーバルちゃんは不満そうでした。でもぼくはしかたないので「わかりました…」と言って料理をつくることにしました。
料理を食べて満腹満足になった博士と助手はようやく小説について教えてくれました。
「小説というものは文字を連ねて作る虚構の物語なのです」と博士は言いました。
「きょこう…?」と僕はわかりません。
「なにそれなにそれー?」とサーバルちゃんは言いました。
「つまりかばんが考えたストーリーを文字を用いて表現することなのです」と助手は言いました。
「よくわかんないや」とサーバルちゃんは言いました。
「なんだか難しそうですね…」とぼくは言いました。
そんなぼくたちに「図書館にはヒトが書いた小説がたくさん残されているのですよ」と言って、博士は一冊の本を持ってきてくれました。「かばん、これが小説なのです」と言って、博士はぼくにその本を渡しました。ぼくがその本をめくると、ときどき絵があるほかは文字がびっしりとならんでいました。
「その本を読んで勉強するといいのです」と博士は言いました。
「かばんが小説を書いてサーバルが絵を描くのがおすすめなのです」と助手は言いました。
「なにそれ!たのしそう!かばんちゃんそうしようよ!」とサーバルちゃんはやる気です。
「まずはその日その日にあったことをかいて練習するといいのですよ」と博士は言いました。
ぼくたちは博士と助手にお礼を言って図書館をあとにしました。それからぼくはその日にあったことを文字を使ってかいたり、博士からもらった小説を読んで勉強したりしています。まだできませんが、小説をかくことができたらオオカミさんみたいに博士のところにまで持って行って本にしてもらうことがいまの目標です。
かばんちゃん、博士にしょうせつっていうものがどんなものか教えてもらおうよ! 右手 @migite1924
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