今日のお話

またたびわさび

第1話 サッカー

サッカーが好きだ。だけど僕は、選手になることをやめた。


小学生の頃、近くのサッカースタジアムで行われていた試合を家族で見に行った。観客席に足を踏み入れた瞬間の、あの胸踊るような空気を吸い込んだあの瞬間の感動は、今でも忘れることはない。


あの日から、僕はサッカーの虜になった。


サッカークラブに入って一生懸命頑張ったつもりだった。だけどどうも心がもやもやする。


そのもやもやがなんなのか、ある時気付いた。








jリーグの試合をよく観に行った。けれどやはり物足りなさを感じる。


日本代表の試合を見たい。


僕が求めているのは、迫力であり、熱量なのだ。

国際試合には、それがある。









あのに、心を奪われたのだ。


フィールドで戦っている選手へ間違いなくその熱量を届けるあの応援に、純粋に感動したのだ。


赤の他人のはずなのに、気に入ったチームの勝利を願って声を張り上げて腕を振り上げる。選手と一緒に心拍数を上げる。


こんなにも素敵なものがあるのかと幼心にも思ったのだ。僕もその一員になりたかった。


jリーグより代表戦の方が好きなのは、単純に応援の人数が多いから。一致団結して戦っていることを、より強く実感できるから。







だから、僕は選手になることをやめた。

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