OPトークと勇者の手紙

 ザアフィエルの憤怒、プレゼンツ!


 DJマオウ!


「と助手ユミルの」


 大魔王は何時でも貴方達を歓迎します!

 紳士淑女誰でも来たれ! デッドオブナイトラジオ、始まります!


(なんかこう、軍歌みたいな勇ましい感じのBGMが流れる)


 はい、第120回目のデッドオブナイトラジオです。

 本放送が始まる前のCMやら何やらがちょっと物々しいのが多くなってきてるけど、まあ大変だね。ついに裏世界にまで勇者がやってきてしまいましたよユミルさん! もう1000年振りの事でマオウわくわくしております!!


「マオウ様、テンション上がり過ぎです」


 これがもう上がらずには居られるか! 

 前に来た勇者は名前なんて言ったっけな? ロットン? ロッテンマイヤー? ああもう覚えてないやうろ覚えだ。つまりそれくらいもう昔って事なんだよユミルさん! 彼はどうやって撃退したんだったかなぁ。


「勇者ロットンです。お忘れですかマオウ様。彼らと遭遇するなり戦うのが面倒くさいからって別の平行世界に飛ばしたじゃないですか。せっかく魔王城まで来れる実力を持つ猛者だったのに、手合わせもしないとか本当に外道ですよね」


 あ、思い出した思い出した。

 いやだってその時の状況だとしょうがないんだよ。

 あのパーティ、よりによってヴァルディア王国軍をまるごと持ってくるとか馬鹿みたいなことやらかしやがってさ。パーティ単位での戦いなんかできる状況じゃなかったんだ。軍団単位での総力戦なんか数えるくらいしかやってないからもうね、指揮が大変だったんだよ。


「軍同士での戦いはアゼル様の時に150回、マオウ様の時代になってからは5回くらいですかね」


 父さん数千万年大魔王やってたわりには少ないのね。……少ないのか?

 僕が大魔王になってからはまだ10万年くらいだからこんなもんかもしれないけど。


「人間達の世界にも事情がありますからね。彼らは仲間同士でお互いに争い合います。魔族としては同族で何故争うのか、イマイチ理解できませんが」


 いやいや魔族同士でもこまごました争いはあるもんだよ。

 あの神々ですら争うんだ。そのせいでこの世界は誕生したとも言えるんだがね。

 我ら魔族は本格的な争いに発展する前に収める術を知っているが、人間達は愚かだから些細な怒りや恨みが一つの発端となってそれがいつの間にか広がってしまう。

 

「ちなみに魔族同士の争いを収めるにはどのような方法が?」


 簡単だ。決闘だよ。


「ええ……」


 魔族同士で総力戦なんかやった日には魔王軍の戦力が大幅にダウンしちゃうでしょ。

 それに元々荒れ気味な裏世界がさらに荒れて手が付けられなくなる。

 元々この世界は力を持つ者が全てだからね。強い奴を決めればそれで解決する。


「ちなみに、決闘のルールなどはあるのでしょうか」


 もちろんあるぞ。

 決闘者以外の参加者は認めない。まあ当然、一対一の勝負だよねって事。

 決闘者同士はお互いに後見人を立てる事。これはあとでやっぱりどっちが勝った負けたの騒ぎにならないように、お互いを監視し、あるいは証人になる為の措置だな。

 決闘を行う場所は人の多い所を避ける事。

 以上だ。


「……それだけなんですか?」


 うむ。実際に戦う時の決め事は一切ないぞ。

 お互いに全力を尽くして勝敗を決めればあとくされも無い。

 まあ、それでも相手を出し抜こうとして卑怯な手を使う奴もいるけどな。

 魔族に関してはこれで大体揉め事を収められるようになって大分スムーズに物事が進むようになった。乱暴ではあるがこれが我らにとっては一番の方法と言う事だよ。


「なるほど……」


 そうそう、前の勇者の時の話だったな。

 前の勇者の時はね、とにかく軍勢の指揮で手一杯で勇者パーティが来たからといって特別に大魔王直々に相手なんかやってられなかったんだよね。

 マスコンバットだよ! ウォーゲームだよ! リアルタイムで状況が一変する中で、やあやあ我こそは勇者である尋常に勝負とか言ってるアホを相手になんかしてられないでしょ。リアルタイムストラテジーやってる最中にターン制のRPGなんかやってられるかってんですよ!!


「マオウ様、キレるポイントが違いますしゲームジャンルをDisるのはやめてください」


 ロットンの前は散発的に冒険者がやってくるくらいだったけど、そういう割と暇な時になら相手をしてやってもいいんだけどね。ロットンはやり方が良くなかった。

 平行世界の様子は時々覗いてるんだけど、ロットンの子孫は今でも元気でやってるみたいだね。もう勇者の血筋であることはすっかり忘れて、ただの町民として過ごしてるみたいだけど。

 そういえば、平行世界にぶっ飛ばした時にその世界線に元々居たロットンは玉つき事故みたいにまたどこかに吹っ飛ばされたみたいだけど、その後どうなったんだろうなあ。


「同じ平行世界に同一な存在は同時に存在できませんから、次々と押し出されていって、やがてこちらの世界に別なロットンが辿り着いたと思われます。ヴァルディア王国軍との戦争が終わり次第、辿り着いたロットンの事を調査してみたのですが、彼は勇者でもなんでもなく、ただの鍛冶屋でした」


 鍛冶屋ですか。伝説の勇者と同一なら伝説の武具でも作ったんかな?


「いえ、終生平凡な鍛冶屋でした。名前もロッテンマイヤーと名乗ってましたしね。ただ、彼の血筋は1000年経過した今でも続いているようです」


 なるほどなるほど。それは良かった……のかな?

 まあ、人間達は人間達で小競り合いするから、こうやって軍勢単位で来る事は珍しいっちゃ珍しいんだよね。

 パーティ単位でならぽつぽつは来るんだけど、大抵冷たい山と谷の島とか、燃え盛る灼熱の大樹の森で力尽きるのが大半だね。


「勇者ハッシーたちはどこまで行けるんでしょうかね」


 ダンジョンアップデイトだと封印の遺跡に入ったみたいだけどね。封印の遺跡に、魔王城の存在する次元を元の位相空間へ戻す為のペンダントがあるから。

 あ、たった今入った最新情報だと、封印の遺跡から一旦出て次元の扉から地上へと戻ったみたいね。全員がそこそこ傷ついてて、忍者が瀕死状態だから一時撤退と言った所かな。


「ひとまずは安心ですかね?」


 油断はしちゃだめだよ。勝って兜の緒を締めよ、じゃないけど彼らは諦めてないからね。引き続き警戒を怠らないようにしてね。

 それと、勇者たちの襲撃で傷付いた魔物が多くいる。彼らには十分な休暇と手当、そして治療が必要だ。ユミルさん、その辺りの手続きは抜かりないね?


「大丈夫です。魔物の一人に至るまで抜けはございませんよ」


 流石ユミルさん。仕事がしっかりしている。頼もしいね。


「ありがとうございます」


 よし、じゃあお堅い話はこの辺にして最初のコーナーやりましょう。


「といっても、お堅い話の続きみたいなものですけどね」


 ええ、いつものアレです。

 では参りましょう。


『勇者ハッシー様からの今日のご報告!』 のコーナー!


 では読み上げます。



* * * * *


 こんにちはマオー様。勇者ハッシー@レベル58です。

 ――はいこんにちは。なんかレベルが大分上がってるなあ。大体40過ぎるとレベルの上がり方が鈍くなってくるもんなんだけど、短期間で大分伸びてるのを見ると何処か良い狩場を見つけたのかな?


 先日、忘れられた神の遺跡に入った所、素敵な魔物を見つけましてそれを狩り続けていたらレベルが物凄く上がりました。

 クリスタルリザードという魔物が一杯出る部屋がありまして、しかも出入りするたびに何故かリスポーンするという素敵仕様になっています。これは狩らずにはいられませんよね。

 ――うん? 僕はクリスタルリザードとかいう魔物を作った覚えはないんだよなあ。父さんもこういう、冒険者が得をするようなボーナス的な敵はほとんど作らないし。という事は、僕や父さんよりも更に前の……いや、あるいはこの遺跡に祀られている神が創った生物という事かもしれないな。


 でも逃げ足がかなり速いんですよね。それでつい追っ掛けていたら隠し扉のスイッチを何かの拍子で押してしまい、そのまま遺跡の最奥に入ってしまったのです。なんか神の残留思念? とか言うのと話をすることができました。

 なんでもこの大地を作った神の一人、ヴォレルデとかいうそれは凄い神様を名乗ったのですけども。ギデオンが神の意識の残滓? とかいう琥珀の中に入った何かの化石を持っていたので会話する資格を得たとか何とか近くにいた妖精に言われたんですが、まあ正直だからなんだって感じなんですよね。ボクは別世界の人間だし。

 ――身も蓋もねえなおい。


 ヴォレルデの思念が語るに曰く、彼はとにかく世界を安定させてほしいとの事でした。しかし、その口ぶりはどこか厭世的で、自分の創った世界が未だに騒乱に満ちている事にうんざりした様子でした。この際人間でなくとも、戦乱のない安定した世界を作ってくれるのなら誰でもいい、という感じでした。ヴォレルデにとっては人間だろうが魔族だろうが、どちらも同じ生命だという事なんでしょうか。

 ――創造神の考える事はいまいちよくわかりませんけどもね。僕も平和を愛する大魔王だし、僕が直々に世界を平和にしちゃってもいいのかな?


 まあ、ボクも勇者の使命とやらを早い所果たして、現代的な生活を取り戻したいんですよね。最初はファンタジーな世界に召喚されてテンション上がりましたけど、いざその中で生活してみると思いの外不便で幻滅しました。

 ある程度は機械でやれた事を魔術で代替はできるんですが、流石にテレビや映画もない、パソコンもネットもない生活はいい加減飽き飽きしています。ここは情報の流通が遅すぎて話にならない。かろうじてボクが持ってるこのラジオが、鮮度のよい情報に触れさせてくれる唯一の媒体です。

 現代世界に帰りたい。ラーメン食べたい。あまりにも食べたくて麺からスープから自作してみたり、城の調理人に頼んで作ってもらっても何かがちがうんです。ああ、そうか! 化学調味料が足りない! 味の〇!

 ――色々と訳のわからない単語が出てきてるなぁ。ここに来て勇者ホームシックですか。可愛そうに。いきなり訳の分からん世界に呼び出されて、お前勇者な! 使命果たすまで帰れねえからな! とか言われたらそりゃメンタルも病むよね。


 ともかく、ヴォレルデとやらの残留思念から凄い魔術を教えてもらいました。

 魔力をレーザーキャノンみたいに放出して多くの敵をなぎ倒すド派手な魔術とか。ギデオンがここに来て最上級の魔術を覚えてくれたおかげで大幅に戦力アップです。僕もついでに光属性の魔術を覚えました。ギデオンですら使えない、勇者だけが扱えるらしいですがよくわかりません。試しに落雷ライトニングボルトを使ってみたら狭い場所だと味方にまで被害を及ぼすとんでもない魔術でした。使い勝手的には光属性を武器にエンチャントする魔術が一番使いやすいですね。その状態で剣を振るうと光波が飛んで超かっこいいですよ。まさに勇者が振るう剣って感じで。今戦闘ではこればかり使ってます。

 ――おお、エンチャントか。僕も好きだよ。闇属性とか混沌の焔を武器に付与すると禍々しい感じがしていかにも大魔王! って感じがするよね! わかるわかる!


 それで、今は大魔王が居る世界とやらに次元の扉の時空間移動で来ました。

 禍々しい空気が漂っててもう早くも帰りたいです。

 大魔王を見つける為にはまず封印の遺跡に行ってアイテムを見つけて、次元を微妙にずらされて存在を秘匿されている魔王城を見つけないといけないんですが……。

 流石に魔物が強い。

 レベルをここまで上げてもかなりしんどいです。

 盗賊から忍者に転職したエルケと、戦士からロードに転職したイリーナが居なければかなりヤバかったですね。特に前衛で盾役をこなしてくれるイリーナが、アンデッドを退ける退魔神光を会得していなければ、封印の遺跡のアンデッド部屋で死んでいたかも。

 ――まあ、封印の遺跡はさすがに裏世界の本気ですからね。色々とお宝もありますし、そう簡単に勇者たちに突破されちゃ困りますし、めっちゃ厳重に警備してますよ! 突破したいならもう少しレベル上げるか、準備しなおす必要があるかも、なんてね。


 現状はこんなところです。

 最近のパーティメンバーは様々な場所に行って経験を積んだおかげなのか、勇者のパーティの一員であると言う自覚が出てきて問題行動に走らなくなってきました。

 唯一、僧侶のパウロを除いては。

 彼はもう、生臭坊主と形容するのが一番あってる気がします。

 肉は平気で人前で食べるわ、大酒飲みだわ、新しい街についたかと思ったらいの一番にその手の風俗店に行くわでもうどうしようもありません。でも、その生臭坊主が実は一番交渉力があり、悪知恵が働くんですよね。パウロのおかげで切り抜けられた局面はかなり多いです。

 で、パウロはやっぱりと言うか、ホモでした。

 僧侶だからそうなんだろうなと薄々思っていたのですが、ね。ここまでその通りだとかえって笑ってしまいました。

 ――そうだね。僧侶と言えば女人禁制というのは有名だね。女は修行の邪魔になる悪魔であるとかいう文言を聞いたことがあるけど、それで男に手を出すようじゃ本末転倒だと僕は思うけどね。欲求は抑えつければ抑えつける程、歪んで暴走するのに何故わからないんだろうかね。人間の考える事はよくわからないな。


 それと、モンクのヤンがロリコンでショタコンでした。

 子供を鋭いまなざしで見守っているな、きっと子供が好きなんだろうなと思ってたのですがそれは盛大な間違いでした。彼の股間がそのときテントを張っていたようなのを見間違いだと信じていたのですが……。

 ただ、彼なりに悩みを抱えていたようで、モンクになったのはその欲望を抑える為だと彼は語っていたのですが、子供と接触するたびに息を荒くするようでは修行がまだまだ足りないと思います。或いはその欲望は彼に課せられた原罪であり、治しようがない性癖なのかもしれません。願わくば、彼が捕まる前に旅を終わらせたいです。


 長々と失礼しました。そろそろこちらに投稿する余裕はないかもしれません。

 ありがとうございました。



* * * * *


 はい、というわけで勇者ハッシーからのお手紙でした。

 いよいよもって彼らは我ら魔王軍の脅威となったわけですよ。

 現状は封印の遺跡はもう厳重に警備させていただいております。勿論、他の場所も抜かりはないけどね。


「我が魔王軍の守りは万全です」


 とは言ったものの、勇者パーティただひとつによって僕たちも結構な被害を受けてるんだよね。怪我人が続出して募集を掛けないといけないとは情けない有様だ。

 二度目の襲来があった時、果たして防ぎきれるかな。流石にうちらもリソース無限大というわけじゃないからね。


「最近は補給や魔物の移動の指示なんかの仕事が多くて、秘書業務が圧迫されがちで少し辛いです」


 今は非常事態だからね。

 とはいえ、秘書課も出来たことだし仕事の分担はしっかりできてるんでしょ?


「それはもちろん」


 よかったよかった。

 ユミルさんには僕の隣にいて、常にサポートしてもらいたいからね。


「それは告白ですか?」


 え……いや、まあ、隣には常に居てもらわないと困るからね。


「ありがとうございます」


 う、うん。


「次はどうやって勇者たちを退けましょうか」


 うーん。それはここじゃなくて魔王城での会議で考えるべき議題だね。

 冒頭からかなり堅い話が続いて少し肩凝っちゃったよ。

 そろそろ次のコーナー行こうか。


 その前に音楽紹介行きましょう。

 アーティストはデッドリーエンジェルで、曲名は「殺戮の天使」です。

 ではどうぞ。

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