世界の果てへと出かける旅
木島別弥(旧:へげぞぞ)
第1話
ここは世界の果て。
ここは世界の終わり。
誰にも気づかれず、誰も気に留めず、誰もやって来ない寂しい場所。
世界の果てへ旅に出た。
ぼくの世界を終わらせるために旅に出た。
世界の果てはきっと何もなくて、純粋で、何もかもが死にそうになっているそんな弱弱しい世界にちがいない。その弱さを期待して、ぼくは世界の果てへ旅に出た。
もう、故郷へ帰ることもない。ぼくは世界の果てへ行き、そこで力尽きて息絶えるのだ。故郷に思い残すことはない。思いを残す人もいない。思いを残すものもない。何もかもを捨てて、ぼくは世界の果てへ旅に出た。
世界の果てならば、世界で最も弱い土地ならば、きっとぼくでも胸を張って生きていけるのだろうと驕り高ぶり、自分より弱いものを求めて世界の果てへ旅に出た。
ああ、ぼくが求めているのは弱さなのだ。自分より弱いものばかりがいたら、それはきっと楽しいだろうと、そう思ってぼくは世界の果てへ旅に出たのだ。もう、現実にはいられない。
ぼくより弱いもの。
枯れ果てた木々。
飛べない鳥。
歩けない獣。
誰も助けられない天使。
罪悪感にかられた悪魔。
何もかもがぼくに都合がいい。
おお、弱さよ。何よりも尊く魅力的な弱さよ。ぼくはその弱さを求めて世界の果てへやってきた。
世界の果てに少年はいない。
ぼくが一人ぼっちだ。
ここは世界の果て。世界の終わるところ。
世界の果て。
世界の終わり。
誰にも気づかれず、誰も気に留めず、誰もやって来ない寂しい場所。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます