私を撮った写真?

紀之介

試してみたかったんだ。

「これって…弥生がこの前、私を撮った写真?」


 プリントされた写真を手に確認する美卯さんに、弥生さんは答えました。


「そうだよ。」


「何で背景しか、写ってないの?」


「…ごめん」


「失敗したの?」


「─ そうじゃなくて…カメラのせい。」


「フィルムの古いカメラなんて使わないで、デジカメで撮ってくれれば良かったのに…」


 残念がる美卯さんに、弥生さんが とんでもない事実を明かします。


「実はあれ…呪われたカメラだって言うから、一度、使ってみたかったんだよね」


「…え?」


「ある条件に当てはまる人物を撮影したら、写真には写らないって話が、本当かどうか 試してみたかったんだ」


 唖然とする美卯さんに、弥生さんは平然と告げました。


「どうも美卯は、その条件に当てはまってみたいで…」


「─ 条件に当てはまって写真に写らないと、どうなっちゃうの?」


 涙目で、美卯さんは尋ねます。


 問われた弥生さんは、悪びれる事なく呟きました。


「…って言う設定は、どう?」


「─ はい?」


「美卯、ちゃんと写真に写ってるから。」


 自分が普通に写っている写真を手渡され、混乱する美卯さん。


「じゃ…こっちは?」


「それは別に、背景だけを写したやつ。」


「─ それじゃあ、聞くけど…」


 刺々しい声で、美卯さんは問い詰めました。


「カメラの呪いって言うのは…デタラメなの?」


「うん。現像した写真見て、ふと思いついたんだよね」


「…」


「─ 素直な美卯ちゃんなら、疑わずに 信じてくれるかなーって」


 自分がイタズラされたと解って、美卯さんは腹を立てます。


 そんな美卯さんに弥生さんは、微笑みながら こう告げたのでした。


「いつものアレ、ご馳走してあげるから!」


 弥生さんの言葉を聞いて、美卯さんの表情が変わります。


「食べたら機嫌…直してくれるよね?」


「…」


 したり顔の弥生さんに、美卯さんは言いました。


「─ 私にパフェ奢れば、何しても許されるって…思ってないよね?」


「大丈夫。そんな事、思ってないから♪」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

私を撮った写真? 紀之介 @otnknsk

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ