2.

 週末は街へ、能力者たちに声をかけ続け人数を集めた。

 平日はテストに向けて勉強をし、時折他のグループと進捗状況や当日の確認など細やかなところまで準備を進めた。

 それが約2週間続き、期末テストがやって来た。

 4日後のテスト最終日には、直人も渚も机にうつぶせになり意気消沈していた。望愛が彼らの教室に来るまで、2人は動くことができなかった。

「絶対補習組だ……」

「自業自得よ。計画のせいにしないの」

「絶対そのせいだろうよ……」

 悪態をつきながら、3人は学校を後に今泉の喫茶店へと足を向ける。

 喫茶店につくと、先に来ていた翔悟が軽く手をあげて挨拶をした。

「お疲れさま。テストどうだった?」

 望愛だけがその問いに答え、渚と翔悟はその表情で結果を察してもらった。

「店長、おまかせで何かお願いしていいですか? 望愛たち、お昼まだだよね」

 翔悟が今泉に頼むと、何とも気の抜けた返事が返ってきた。

「何ですかその声。私たち、一応客ですよ店長」

「えぇ、えぇ、いつもどうもです。ほんのわずかな収入をありがとうございます。君たちが毎日のように来てくれて店長嬉しいですよ」

 最早やさぐれた態度を隠そうともしないまま料理を作り始めた。この感じだと、この店が閉まるのも時間の問題なのかもしれない……。渚はそう思ったが、それは胸のなかだけにおさめることにした。

 料理が来るまで今日のテストの愚痴を――主に直人が率先として話していたが、料理が出てくるとみんな食べることに集中した。

 半分ほど食が進んだところで、ぼちぼちと3日後に迫る計画についての話へと変わった。

「思ったより、準備の方はそこまで手こずらなかったわね」

「うん。人数も最低限の所までは確保できたし」

「あとはもう、最終確認の段階だろ?」

「そうね。あとは邪魔が入らないか……特にハヤブサの目だけは本当に注意しないと」

「そっか……ばれたら計画どころじゃなくなるもんね」

 これまでも、彼らは特にハヤブサの目を常に警戒してきた。姿や人数など、まったくの未知であるハヤブサ。今回の件もネットで出回っていないか、ほかの誰かが関係のない人に話してはいないか。厳重に隠しながらここまでやってきたのだ。

「ま、当日に何も起きなきゃ、俺らの勝ちだな」

「別に争ってるわけじゃないよね……?」

「なんにしろ、この計画をつぶされたらすべておじゃんよ。全てが終わっても、今度はあの場にいた能力者全員がターゲットにされるかもしれない。下手したら捕まるかも。そうなったら、それこそゲームオーバーよ。私たちの最終目的はあくまで国に能力者たちの存在意義を認めてもらうこと。そして、それ相応の役割を見出してもらうことなんだから」

 あっさりという望愛だけれど、実際その内容はただの高校生には難しすぎるものだと思う。けれど、そうは思うけれど、望愛たちのこの表情を見ると、もしかしたら……という思いがわいてくる。

 いつにもまして、計画について事細かに一から確認していく。もしもの時の対応、そして役割分担。案外、やることはたくさんあった。

 時折今泉が出してくれる飲み物やお菓子をつまみながらも、話はずっと続いている。一通り、すべての確認が終わった頃には、もう20時をまわろうとしていた。

「うわ……もうこんな時間かよ」

「店長、すみません。遅くなってしまって……」

「いやいいよ。ずいぶん真剣だったみたいだし」

「さすがにこれ以上、居座るのは申し訳ないから、今日はこれで解散にしよう」

 翔悟の言葉に、みんな近くのものを片付け始めた。

「明日はどうする?」

「そうね……直人の家で大丈夫? 毎日ここじゃ店長に申し訳ないし」

「別に気にしないでいつでも来ていいからね」

 今泉はそう言うが、さすがに毎日のようにここに集まっているのは申し訳がない。それに高校生が毎日喫茶店に通うというのにも、金銭的に痛くなる。

「いいわよね、直人」

「へぇへぇ、構いませんよー」

 いつものことと思っているからか、直人はあきらめたように返事をしていた。

「じゃあ、明日は直人の家で。決行まであと少し。気を抜かずに頑張ろう」

 翔悟の締めの言葉に、各々が力強くうなずいた。

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