第39話
その夜、僕らは久しぶりにみんなで食卓を囲んだ。
肉の焼けるいい匂いがあたりに立ち込める。
「こんなにおいしいお肉を食べられるのも、これが最後かなあ」
カッコは次から次へとカルビ肉を口に運びながらしみじみと言った。
「できれば僕は最後にしたいよ。サオリ、まだ調子悪いの?」
さっきからほとんど食べていないサオリの様子が僕は気にかかっていた。
「ううん、平気。あしたうまくいくといいよね」
そのとき、カッコが言わなくてもいいことを言ったんだ。
「そういえばサオリちゃんはさあ、もし僕らの団地に来ることになったら、どこに住むの?」
ぼくらは急に黙ってしまった。ジューという肉の焼ける音だけが聞こえる。
それは僕もうすうす感づいていたんだ。あした作戦がうまくいって、サオリが僕らの街へ来たとして、その後いったいどういうふうに暮らすのかってことを。
「まあ、さ、とにかく、僕らが何日も行方不明になっているっていうことは、きっと大ニュースになっていると思うんだ。でも、ここであったことを言っても信じてくれる人がいるかなあ・・・。だとしても、大人たちがきっとなにかいい方法を考えてくれるはずだよ。とにかく、みんなで一緒に帰ろう」
僕は思いつく限りのことを言った。それがほとんど気休めだというのは、みんなわかっていた。でも、サオリをひとりここに置いていくことはできない。サオリは
「ありがとう」
とさびしそうに笑顔をつくった。
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