第27話 25

 

牛竜カルタノ?」


 俺が鸚鵡おうむ返すと、シアがこくりと頷いた。


「頭部の形状からそう名付けられたそうです。ほら、牛みたいでしょう?」


 俺は腐敗し始めた『橙色恐竜』の生首をしげしげと眺める。

 俺の知っている牛とは似ても似つかない顔だが、一般的には牛に見えるらしい。


「おそらく自分より大きな生物を積極的に攻撃する習性があるのではないかと思われます」


 台形の帽子をかぶった唐の研究者が補足した。

 すぐ近くでは絵師たちがカルタノの写生に励んでいる。


「建造物ばかりを攻撃していたのもそれが原因ですか」


「ええ。おそらく」


 小さな突起の並ぶ胴部、それに異常なほど小さな前足。

 研究者の手が橙色の皮をなぞった。


「彼らが都市に進撃した場合、人的被害より家屋の被害の方が深刻になる可能性があります」


 俺は顎に手を置いた。


「厄介だな」


「厄介でない恐竜はいませんよ。今のところ」


 屈んでいたシアは尻の辺りに手を添えながら立ち上がる。

 彼女は未だ黒いドレス姿のままだった。

 ――案外、気に入っているのかも知れない。


 どだん、と新たな死体が運ばれた。

 すぐ近くの石櫃に置かれたのはラプトルだった。

 よく見ると体表にうっすらと羽毛が生えている。


「毛が生えてるな」


「比較的寒冷な土地に住んでいた種でしょう。何かの間違いで南進して、そのまま居ついてしまったのでしょうね」


 シアの指がラプトルの目に至り、その瞼を閉じた。



 市街地を舞台としたあの戦いから数日が経過していた。



 どだん、どたん、とあちこちに新たなラプトルの死体が運ばれる。

 小豆色の服を着た唐の研究者たちは助手も含めて数十人。

 ある者は恐竜の胃の腑を開き、ある者は歯の形状を検分している。


 数十も並ぶ石櫃は万に達する輜重隊が運んだものだ。

 唐の輜重隊は生活必需品以外にもこうした様々な道具を輸送していた。

 首を巡らせば復興どころかまったく別の形に改築されていく街並みが見える。

 大工、指物師、金物屋。

 布引、鋳物屋、釘打ち、縄張り。

 ありとあらゆる種類の職人が唐の街並みを前線基地に改造していく。


 路上では理髪師がハサミを振るい、研ぎ師が砥石に武器を走らせている。

 いかがわしい店からは紫煙が漏れ出し、そのすぐ傍を染物屋の子供たちが走る。

 野菜が運ばれ、水が運ばれる。

 土地の隅ではイモの栽培すら始まっているらしい。


 万を超える軍勢はもはや一つの国家のようだった。


「今日は来ないようですね」


 窓を見つめていた俺の肩にシアの顔が近づく。


 アキ達が撤退したあの日以降、散発的な襲撃が続いていた。

 現れるのはアロがほとんどで、時折それにラプトルが混じる程度だ。

 恐竜人類の姿はなく、ほとんどの場合、恐竜は力押しで攻めてきた。


「移動したのかも知れませんね、彼女たちは」


「……」


 俺は彼女たちが奪った地図のことを考えていた。

 引き裂かれた地図のうち、残されたのは唐やザムジャハル、つまり西部の地図だった。

 持ち去られたのはブアンプラーナや葦原といった東部の地図。

 もしかするとアキ達はそちらへ向かったのかも知れない。


 シャク=シャカを打ち倒したユリが去った後、俺たちは戦いのどさくさに紛れて逃げようとしたが、結局できなかった。 

 馬は厩舎から逃げ出してしまっていたし、酸鼻を極める市街地を見捨てるのもためらわれた。

 何より、ハンリ=バンリが家屋の崩落に巻き込まれて重傷を負っていた。


 人は八つ当たりをする生き物だ。

 あの状況で逃げ出せば彼女が俺たちに向ける恨みや憎しみは何倍にもなることが予想された。

 結局、俺とシアはバンリに恩を売ることにした。

 彼女を含む負傷者の救助を手伝い、援軍との合流までに必要な手当てを施した。


 その話がバンリとシャク=シャカの上の人間に伝わったらしい。

 俺とシアとルーヴェは必要な手続きを踏んだ後、解放される運びとなった。


「シア。出発の準備は?」


「とっくに済んでいますよ」


 太陽は今まさに頂点へさしかかろうとしていた。

 昼になれば世話になった人々に挨拶を済ませ、ここを発つ予定だ。

 東進してブアンプラーナを経由し、葦原へ帰還する。


 解放が決定した時点で手紙は送っていたが、一刻も早く葦原に俺の見聞きしたものを伝えたかった。

 ――唐で経験したことも含めて。


「シア」


「はい?」


「北のエーデルホルンに向かうなら、ザムジャハルからの方が近道じゃないのか」


「通れると思いますか、あの国を」


 その二国は戦争状態だ。

 唐とザムジャハルも戦争中。


「……まあ、そうだよな」


 彼女も本国に書状を送っているようだったが、口頭でしか持ち帰ることのできない情報が山とある。

 安全な道を使いたいと思うのは道理だ。

 どうやら彼女とはもうしばらく同道することになるらしい。


 あら、とシアは久しぶりにいたずらっぽい顔を見せた。


「私と一緒に行くのはイヤですか?」


「とんでもない。光栄だ」


 ふっと俺たちは感情の介在しない笑みを浮かべる。


「もうしばらく、よろしくお願いします」


「ああ。こちらこそ」


 九位、と若い男が俺を呼んだ。






 連れて行かれたのは講堂らしき建物だった。

 森の周辺に設けられた野営地とは別に、市街地のこうした施設にお偉いさんが集まっているという話はブソンから聞かされていた。

 既に一兵を越えた立場であるブソンにとっての『お偉いさん』。


「おお、来たか」


 額を寄せ合っていたのは数人の男だ。

 いずれ劣らぬ体格の持ち主で、年季の入った甲冑や革鎧に身を包んでいる。

 色は萌黄色やひわ色といった黄色系統が多い。鼠色の外套を着こんだ者もいる。


 がちゃ、かちゃ、と音を立てながら男たちがこちらを向いた。

 年齢はバラバラだが、二十や三十には見えない。

 焼けた額に皺を刻んだ男、目元に刀傷のある男。

 長い髪に女ものの髪留めを結んだ男、頭頂部に毛の無い男もいる。

 鍛え上げられた老兵ばかりだ。


「申し訳ないな、出発前に」


 ちっとも申し訳なさそうに言ったのはひときわ体格の良い男だった。

 鎧を着こんでいる分、シャク=シャカよりも大きく見える。

 年は四十か、五十か。


 唐はエーデルホルンのように徽章で階位を明示する国ではないが、俺はひと目で彼の素性を悟った。

 この万の軍勢の中でも上位の人間だ。

 対峙しただけで実力も悟ることができた。――相当な手練れだ。


「滅相もありません。何か御用でしょうか」


 俺は弓を置き、膝を折った。

 途端、年嵩の男たちがフハっ、ははっと笑いを漏らす。


「ニラバの弟子と聞いたからどんな跳ねっ返りかと思えば――」


「ちゃんと礼儀を弁えてる。良い子だ」


「逆だろう。アレの教育を真に受けていないということは、そもそも跳ねっ返りということになる」


(!)


 男たちが口にした名に顔を上げる。


「ニラバ二位のことをご存じなのですか?」


「ご存じだ。何度か殺し合ったこともある。そういう男は存外多いぞ。この国にはな」


 横から口を挟んだのは柄の悪そうな老戦士だった。

 太い首筋には刺青が入っている。


「そう言えばネギツリのババアはまだ生きてるのか?」


「今は退役して相談役をなさっています。最終的な階位は三位だったと記憶していますが」


「ほー。相談役ねぇ」


「あのババアも丸くなったんだろうな」


「逆だろう。丸くなれなかったから相談役なんて仕事を割り振られるんだよ」


 男たちは何が面白いのか、くつくつと笑っている。

 悪意は感じない。

 ただ単に過去と現在に交互に思いをはせているのだろう。


 別の男が口を挟んだ。

 老いた亀を思わせる顔の男だった。


「今の一位は女だそうだな」


「ええ」


「美人か?」


 俺はカヤミ一位の顔を思い浮かべる。


 美人では、ある。

 感情の起伏が少ないので色気はほとんど感じないが。

 雰囲気だけ見るとオリューシアに似ている気がする。

 俺はそのように返答した。


「ほう。あの姉ちゃんにねえ」


 男たちは興味深いのか、そうでもないのか微妙な沈黙に浸った。

 まさか世間話をするために呼んだのか、と思い始めたところで鼻の高い男が槍斧の柄で床を叩く。


「ワカツ九位」


 そのあまりの迫力に俺は思わず立ち上がり、両踵を揃える。


「ウチの若い奴が迷惑をかけたな」


 言葉では謝っていたが、顔は怒っているように見えた。

 長年その顔で部下を叱り続けてきたせいだろう、と察せられた。


「あ、いえ……私こそ貴官、き、貴「まさか嘴の黄色い奴しか来ていないとは思わなんだ」」


 男は俺に言葉を被せ、更に別の男がそれを受ける。


「シャク=シャカのひよっこに小便臭いハンリ=バンリ、あと女狐のフソン=ブソンか。ここらでそれなりに名前があったのは」


「子供軍隊か。うへえ、だな」


「道理で被害が大きいわけだ」


 熟練の将からすればあの三人もまだ子供らしい。

 内戦が続いているせいもあるだろうが、唐軍の層はどこよりも厚い。


 穏やかな顔の男が俺を見る。


「おそらく今後、葦原とは共同戦線を敷くことになる。だから謝っておきたくてね」


(……)


 ああ、と俺は察した。

 彼らが見ているのは俺や葦原ではなく、その手前にある仇国ブアンプラーナだ。


 いかに唐軍が強大とは言え、平地でティラノの軍勢とかち合えば無駄な犠牲が出る。

 人類側でそれを防ぎうる唯一の方法がブアンプラーナの象軍だ。


 だが唐とかの国の間には埋めがたい溝がある。

 簡単に言えば、かつて『唐』と呼ばれた黄金国家を滅ぼしたのがブアンプラーナなのだ。

 互いに悪感情を抱いている状況下では共闘などできはしな。

 その二国の渡し橋となれるのは両国に顔の利く葦原だけ。


「そちらにその気があるのなら、こちらはいつでも手を貸す用意がある。人も、カネも、いくらでも配してやれる」


 老兵たちの目はじっと俺に注がれている。

 脅すつもりも怯えさせるつもりもなさそうだが、厳然とした意思を感じた。


「もちろん、君らの隣人であるブアンプラーナもだ。だからあの下っ端共が唐のすべてだとは思わんでくれ。言いたかったのはそれだけだ」


 要するに、葦原の上部にそう伝えろと言っているのだ。

 俺の解放は彼らにとって『貸し』。


「承知しました」


 俺は素直に頭を下げた。

 老兵たちの呼吸に満足げなものが混じる。


「やはり葦原の兵は行儀が良いな」


「だな。こういうのがいると落ち着く」


 嫌味とも賞賛ともつかない言葉。

 返答に窮した俺が言葉を探していると、講堂の門が軋む音がした。


 こつ、こつ、こつ、と。

 周囲の兵が敬礼を続ける中、近づいてくる足音があった。

 振り向く。シャク=シャカだ。







 炎色の軍服に身を包んだ男は颯爽と俺の横を通り過ぎ、その場に膝をついた。

 ぼうっと立っていた俺も慌てて膝をつく。


「閣下」


 老兵が左右に避ける。

 一歩前へ出たのは白交じりの灰色の髪を背に垂らした男だった。

 口元は品の良い髭に覆われ、野趣味のある顔に彩を添えている。

 彼が着こむのは薄茶色の鎧だった。


「どうした、シャク=シャカ」


「おいとまをいただきてえ」


「!」


 彼が敬語を使うのは初めてだった。

 閣下と呼ばれた男は軽い所作で肩をすくめる。

 彼がシャク=シャカ直属の上司なのか、単に同系組織の身分ある人物なのかは分からなかった。


「なぜだ。負けたからか?」


 シャク=シャカは自分が口にしようとした言葉を先に言われ、困惑しているようだった。

 閣下と呼ばれた長髪の男は冷ややかさすら感じる目でシャク=シャカを見返した。


「君個人が負けたことは問題ではない。むしろ早い段階で分かって良かったと思っている」


 分析家のような口ぶり。

 荒くれに等しいシャク=シャカがこんな人物の指揮下にあることが少々驚きだった。


「今後、恐竜人類との交戦については最低でも三十人構成以上の連隊で当たることとする」


「閣下。俺が言いてえのはそういうことじゃねえ」


 シャク=シャカは苛立っているようだった。

 閣下と呼ばれた男はふんと鼻を鳴らす。


「敗けたままでは終われないとでも?」


「ああ、その通りだ」


「敗北を知らずして最強は名乗れないということだ。良い勉強になっただろう」


「……」


「汚名を雪ぎたい気持ちは分かるが、お前は剣を磨くより心を――」


「俺の話じゃねえ。これは俺の敗北じゃねえんだ!」


 空気が張り詰めた。

 シャク=シャカの顔面に己への怒りが浮かぶ。


「俺ァ……俺ァ『唐』を背負って敗けた! 俺が許せねえのはそれだ!」


「……」


「俺が雪ぐのは唐の汚名だ。唐はトカゲに負ける国じゃねえことを、俺が証明してみせる!」


 老兵の目つきが変わった。 

 閣下と呼ばれた男がじろりと目を向ける。


「饒舌だな。……で、軍を出てどうする気だ。一人で霧の中へ行く気か?」


 いや、とシャク=シャカは告げる。


「葦原に行って来る」


「?!」


「何をしに行くつもりだ。あそこに唐ほどの戦場は無いぞ」


「だが、唐とは違う技を持ってる」


 シャク=シャカの目に獣じみた光が灯る。


「この国の剣なら源流までだいたい見知ってる。それを究めてまだ届かねえなら、よその剣を学ぶしかねえ」


 褐色の指が折られた。


「エーデルホルンは剣の形が違い過ぎる。ブアンプラーナは拳打の国だ。ザムジャハルはそもそも入れねえ。だったら葦原だ。あそこはここと同じで刀を使う。技を盗めねえわけがない」


 ワカツ、とシャク=シャカが水を向ける。


「お前の国には『武士』ってのがいるだろ?」


「あ、ああ」


「そいつらと会わせてくれ。できるだけ強ぇ奴がいい」


 できるだけ強い武士。

 その言葉の意味するところにはっと息を呑む。


「居るだろう? お前と似たような凄腕の剣士が」


「……七太刀のことか? 『霞七太刀かすみななたち』?」


「それだ」


 俺の属する『十弓』は弓の上位十人。

 剣士の上位は『七太刀』の名で知られている。

 いずれ劣らぬくせ者と変人揃いだが、腕は確かだ。

 確かに彼らならシャク=シャカの知らない何かを授けることがあるかも知れない。


「……もちろん、命の取り合いじゃねえ。胸を借りに行くんだよ」


「この状況であんたが軍を抜けたら……」


「恐竜女は――」


 閣下と呼ばれた男が口を挟んだ。


「次は確実にシャク=シャカを仕留めに来る。そのユリとかいう女を差し向ければ確実に殺せるわけだからな」


「そいつはまだ若造だが、死なれると面倒な若造であることは間違いない」


「その通り。戦地を離れらえるのなら厄介だが、戦地で死なれるぐらいならその方がマシだ。兵の士気に関わる」


 老兵たちが遠回しに俺に命じている。

 そいつの好きなようにさせてやれ、と。

 悪童を慮るような気持ちも混じっているのだろう。

 先ほどより声音が優しくなったように感じる。


「ワカツ。葦原に帰るんだろう? 俺も連れて行ってくれ」


「……」


 即断はできなかった。


 シャク=シャカは唐の人間だ。

 そして彼自身も言った通り、いずれ恐竜を飲み込みかねない大国だ。

 利敵行為になるのではないか。

 彼の剣が七太刀を傷つけたら間接的に葦原の戦力を削ぐことになるのではないか。

 いくつかの疑念が胸に渦を巻く。


 だが、分かることもある。

 自分の敗北を心から笑える男などいない。

 シャク=シャカの心に差す陰はユリを斃すことでしか晴らせない。


「……ワカツ」


 俺と同じ目の高さまで屈んだシャク=シャカが頭を下げた。


「頼む」


「……!!」


 俺は慌てて彼の頭を上げさせた。

 そして――頷いた。






 ルーヴェとシアは既に馬の準備を整えていた。


 赤いスリットドレスに身を包むルーヴェは剣を二つ携えており、馬にブラシをかけている。

 おっかなびっくりの手つきなのは馬を育てる習慣が無かったからだろうか。


 黒いスリットドレスのシアはフソン=ブソンと何やら話し込んでいるようだった。

 だが俺とシャク=シャカに気付いた二人は口を閉じる。


「見送りですか? そんなことする必要は」


「いや、一緒に来るらしい」


「?」


 事情を聴いたシアは目を丸くし、フソン=ブソンは脱力のあまりはだけた衣装がずるりと落ちそうになる。


「えぇ……?」


「と、唐を出る? ……呆れた話ですね。あなたの不在は唐にとって痛手でしょうに」


「居残って殺されちまうよりマシだ」


 シアがちらと俺を見た。

 葦原的にそれは良いのか、という目だ。


「こんなもの渡されたら断れない」


 俺は紙束を見せた。

 あの老兵たちが名前を入れて書いた紹介状やら挨拶状やらだ。

 恐竜の進撃を前にしながら実力不足を嘆く武人としてのシャク=シャカをどうのとか、旧交がどうとか、二国の梟雄の交流によってどうとか、そんな美辞麗句が踊っている。

 断ればそれこそ外交問題に発展しかねない。

 ――と言うか、無事にこの国を発つことはできないだろう。


「困った人間が多い国ですね、ここは」


「悪いな」


 シャク=シャカは照れくさそうに頭をかいていた。

 その笑みには墨を一滴たらしたような翳が差している。

 まるで伴侶を失った男のような顔。


「すまんなブソン」


 シャク=シャカはブソンを振り返る。


「破天荒な御仁だとは思ってましたけど、まさかそこまでとはね……」


「バンリのことは任せる」


「分かりました。まあお気張りなすってください。七太刀の一人も切り捨てれば上等でしょうね」


「おい」


「あらいけない。まあ、私は事故が起きることを願うことにします」


 シャク=シャカが栗毛の駿馬にまたがる。

 ルーヴェとシアもそれぞれの馬に乗り、俺も長弓を背負いながら馬に飛び乗った。

 目の色は、赤、黒、青に茶色。


「道中、お気をつけて」


 ブソンが心にもない言葉をつぶやく。


 俺たちは馬の鼻先を東に向けた。

 象と湿地の待つブアンプラーナから吹く風は、心なしか生暖かった。

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