ヒノメ村というところ
彼らの生まれたヒノメ村は山と海とに囲まれて外との繋がりも希薄な小さな村だ。
隣町からやって来る商人も旅をして回っている流れ者も月に一人か二人見掛ける程度で、三人目となればかなりの珍しい部類に入る。
急勾配な山々は村の者に幸を恵みはするが往来の妨げに一役買っており、海は海で丘を越えた先の切り立った崖の下。
舟を出そうと波に飛沫を上げさせる岩場を避けて白い砂地の広がる浜辺を目指せば片道に一刻は掛けねばならなかった。
そのような土地柄故に貿易や漁業より林業、農業が好まれて内向的な営みが土着したのは必然だったとも言えるだろう。
崖を有する丘の中腹には檜揃えの立派な御社が建てられている。
山を削って耕された段々畑。
画一された木造平屋の家々。
境界線のように引かれた丘の麓の水路。
水路に架けられた橋の先の鳥居。
丘を起点に扇状の広がりを見せる土地を一望出来るその場所に住まうのは村の民たちから信仰を集めている神の血族だ。
快晴の空のように澄んだ青。
野畑に咲く露草の花色の青。
七宝の瑠璃の如き美しき青。
個人差はあるものの血族の者は皆、青色の瞳を持ち、雪のように白い
黒目に黒髪、外の者と見目に違いもなく何の力も持たない只人の民たちからすれば彼らはまさに神の血族を名乗るに相応しい存在だった。
中でも
通称
もしくは
御社の本殿――本丸内に建てられ
ヒノメ村には神とその血族が住んでいる。
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