第24話
「皆様、この度は命をお救い頂きありがとうございます。」
三人の獣人たちは竜人たちに膝を付き頭を下げてきた。
「気にしなくていい。俺たちが勝手にしたことだ。頭を上げてくれ。」
「いえ、奴隷である私たちにこんなに優しくしていただいて、皆様の命も危なかったというのに。」
「兄さんの言うとおりです。気にしなくて構いません。人間の皆さんに対する扱いは本当に申し訳ないと思っています。」
「お兄ちゃんとお姉ちゃんの言うとおり、気にしないで。」
竜人たちが説得をして漸く頭を上げてくれた三人。そしてとりあえず全員で自己紹介をすることにした。
犬獣人の名はラビア18歳、猫獣人のリジィー17歳、兎獣人のティーナ20歳とのことだった。ラビアは生真面目な性格のようで少し固いしゃべり方をしていて、リジィーは明るい性格でハキハキとして、ティーナはのんびりとした性格のようであった。
竜人たちは今後について相談することにした。
獣人たちの主人が居なくなったため、その権利は竜人たちに移って居ることは全員承知していた。
問題は竜人たちは目的を持った旅をしており、その旅は危険を伴っているものである。
そして、竜人は奴隷という制度にあまりいい感情を持っていないことにあった。
「俺に奴隷解放の伝があるんだ。ただ今は手持ちの金が余り残っていなくてな。悪いけれどしばらくは解放してあげられないんだ。」
その事を聞いた獣人たちは驚いていた。
「奴隷解放なんて、私たちはご主人様たちに何もご恩返しもしていないのに。どうか私たちを旅に連れていってください。荷物持ちでもなんでもしますのでお願いします。」
再び頭を下げてしまう三人を前に竜人も困り果ててしまう。旅に同行すると言うことは、竜人たちの秘密も明かさなくてはならない。
(さすがにアルたちを見れば普通じゃないことは一目瞭然だしな。)
エリスとミーナに相談をする竜人。二人は三人を連れていっても良いのではないかとの意見だった。
自分たちの過去の境遇を思ってのことなのだろう。そして竜人に二人の意見をはね除けるだけの反論もなかった。
竜人は獣人たちに自分たちの事情を説明をすると、異能についても話すことにした。
「ご主人様、是非私たちにもお力をお与えください。必ずやお役にたって見せます。」
「ご主人様、私にもお願いします。ご恩返しをさせてください。」
「ご主人様~、私もお願いしますぅ。」
「分かったからちょっと落ち着け。それとご主人様はやめてくれ。なんか背中が痒くなってくる。」
(なんか話に聞くどこぞのメイドカフェの客になったような気分だ。)
親友の隆司だったら泣いて喜ぶシチュエーションも、竜人にはそんな趣味はなかった。(シスコンでもないぞ!)
そういう竜人だったがラビアからの譲れない一線になかなか同意してくれず、妥協点として竜人様、エリスお嬢様、ミーナお嬢様と呼び名が決まった。
そして奴隷登録と眷族化を行うことにした。
儀式を行うと光が三人を包み、ラビアには忠の珠、リジィーには礼の珠、ティーナには信の珠が体の中に吸収されていく。
・ラビア 犬獣人 18歳
能力値
○力A+ ○魔力C- ○俊敏A ○賢さB ○生命力A+ ○魔法防御A-
装備
なし
特殊技能
○
所属
柳竜人の眷族(奴隷)
・リジィー 猫獣人 17歳
能力値
○力A- ○魔力B- ○俊敏S- ○賢さB+ ○生命力A- ○魔法防御B
装備
なし
特殊技能
○
所属
柳竜人の眷族(奴隷)
・ティーナ 兎獣人 20歳
能力値
○力B- ○魔力A ○俊敏A+ ○賢さA+ ○生命力B- ○魔法防御A
装備
なし
特殊技能
○
所属
柳竜人の眷族(奴隷)
○
○
○
○
○
○
ラビアたちは、体に珠が吸収されると急に溢れてきた力に驚いていた。ステータスを確認するとやはり以前とは比べ物にならないほどのステータスと特殊技能が備わっていた。
(なるほど、ラビアは盾持ちの剣士、リジィーが槍使い、ティーナが弓使いか。獣人だけに基礎能力は高いな。)
「とりあえず武器については一通り購入してあるから、それぞれ受け取ってくれ。」
そういうと竜人はマジックバックから本人たちにあった鉄製の武器を渡す。
「それほど高いものじゃないから性能面は余り期待できないが、無いよりはましだろ。町に戻ったら新しいのを見繕うから。」
「いえ、私たちには勿体ないです。」
遠慮をしているラビアたちだったがエリスも説得をする。
「皆さんはもう私たちの仲間なのですから、そんなに畏まったりしないでいいんですよ。」
「そうだよ。ラビアお姉ちゃんもリジィーお姉ちゃんもティーナお姉ちゃんも、みんな仲良くしよー。」
「エリスお嬢様、ミーナお嬢様ありがとうございます。」
三人は姉妹に感謝の言葉を告げる。
「さて、みんなそろそろお昼にしようか。さっきの戦闘で食べる暇もなかったし、体力もかなり消耗したしね。」
マジックバックからあらかじめ買っておいた作り置きの料理を出すと、作りたてのように湯気が立ち上っていい香りが周囲に広がっていった。
シチューをそれぞれの皿によそうと、鳥の股肉の串焼き、パン、ジュースを出して簡易テーブルの上に料理を並べる。
ラビアたちはその匂いに思わず喉をならしていた。
竜人は、恐らく普段から余り良いものを食べていないだろうと思い、多目に料理を出して食事を促した。
最初は遠慮がちだった三人もエリスとミーナにも促され、何よりその匂いと食欲に負けて掻きこむように食べていた。
「そんなに慌てなくてもお代わりならあるから心配するな。」
先に食べ終わった竜人は、アルとピピを呼んで見張りをしていてくれたことに感謝の言葉を告げると、見張りを交代してアルたちも昼食を取り始めた。
やがてお腹が膨れてきた三人は突然泣き出した。
「こんなに美味しいもの食べたのは初めてです~。」
ティーナがそう言うと、二人も泣きながら「ありがとうございます。」と言っていた。
しばらく食休みの時間を取ると三人も次第に落ち着いてきた。竜人は今後の予定として、先に進むのは体力的にも危険と判断し十階層まで戻り転移装置で迷宮からの脱出を決めた。
食休みの間、ミーナは三人にアルたちの紹介と幻獣状態を見せていた。三人も初めて見る幻獣に驚いていたが、言葉が通じることを説明されるとそれぞれ自己紹介をしていた。
アルたちも動物状態に戻り鳴き声をあげながら答えていた。そんな和やかなムードを竜人は微笑ましそうに眺めていた。
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