詩篇箱
鯨杜リリス
いちごとシリウス
ベテルギウスは燃えに燃えて
いちご飴を配る老齢の皺の手 かつての光に甘えている夢を見る
もっともっと古い星があった
彼に呼ばれた名前 ビートルジュース 略してビート
手取り足取り教えてくれたんだよ とても明るい星だった
“またその話”
ベテルギウスが笑って話すのは珍しく シリウスは気にくわない
“生まれてない頃のことを話されても困る”
拗ねてみても伝わらないのは分かっていた
“お前はやきもちやきだ”
まぁ、その通りなのだ
こんなお爺様の昔の大事な誰かに嫉妬したところでなんにもならない
あんまり言えば、今はもうない星 すなわち……そういう事を思うと下手に踏み込めもしない
“似ているところがある その青白い光”
“………どうも”
褒められているのか知らないが 何らかの感慨に預かり光栄です
“今日も話を聞いてくれたお礼にいちご飴をあげよう”
真っ赤っかのいちご飴
あんたみたいな色だよ
“まだまだ光れよジジィ”
“もちろん”
“オリオンが野球できなくなるからな”
“お前とて”
ベテルギウス 神様みたいな赤い光強い光
いつかシリウスも 飴を受け継いでいく
詩篇箱 鯨杜リリス @yumiyomituduri
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