第35話 EXTRA STAGE:Do dee do DMT
「――んん……ッ」
例のSPACEBABY MEDITATIONだかって装置の中で、俺はまた目を覚ました。
しかし……今回も物凄い体験だったな。にしても、あんだけ凄い踊りを踊るシヴァを尻に敷いちまう嫁さんの顔が見れなかったのは残念だったけどな。ハハ。
ステージをクリアー出来た事への安堵からか、比較的楽観的な感覚で物事を考えていられている自分に気付いた。
なんて、そんな事をぼけ~っと考えていると、頭がスッキリするのを待たずガイダンスロボの声が聞こえてくる。
「皆さん、第4ステージクリアーおめでとうございます。これにてSPACE BABY MEDITATIONステージオールクリアーとなります。各自、頭部及び手足に接続されているコードを外し、座席を降りましたら前方のドアへとお進みください」
おぉ、ついに終わりか。しっかし本当に長かったわ。今はまだ何にも考えらんねえ。ノイと帰りしなメシでも食って帰るか。何がいいかな、体にいいもんがいいな……。
そうして俺は体中に繋がれている管を外し、半個室状の座席を立つ。すると……
「きゃあああああああ!!!」
女の叫ぶ声が聞こえた――この声はノイだ、間違い無い。
俺は声のする方へ向かった。すると、やはりその先にいたのはノイだった。
「おい、どうした? 何かあったのか?」
「あ、あれ……あれ」
ノイがそう言って指さした先の座席を見ると、そこに座っている人物の足元に得体のしれないバケモノのようなものの死骸が転がっていた。
「うわっなんだあれ……」
それは『体のパーツがあべこべになった人間』と言ったらいいんだろうか。なんで膝に顔が付いてるんだよ……。
少しするとそのバケモノの傍の座席に座っていた人物が立ちあがる。
――コーリだ。
コーリは足元のその気持ち悪い死骸に目もくれず、俺らに笑顔をよこした。
「あっお二人さん。先程はお疲れ様~、キシシ!」
「あ、ああ……って、お前その足元の気にならないのかよ……」
「あぁこれはね、僕が脳力を得た時に巻き添えになった人みたい。悪いことしたなぁ」
「え……あそう……」
ま、死んでるならいいか――って駄目だ、俺もなんだか感覚が麻痺してきたみたいだな……。
「みんなもうお目覚めの様だね。準備が出来たら、ドアの向こうに進んでみようか」
前方のドアの前に立ったエラが俺達に声をかける。
「すごーいみんなほんとにいる人だったんだね!」
「確かにさっきまで夢ん中だったからな、そう思うとおもしれーな」
「取り合えずあと少しの間、よろしくね」
「キシシ!」
アナウンスが流れる。
「それではみなさんお揃いの様ですので、ドアの先へとお進み下さい」
とととととととととととととととととととととととととと
俺らは4人でドアの向こうへと進んでいく。
「そう言えば……第4ステージでノブル君が寝てる間に、見ての通り仲間が一人増えたんだよ」
「え、どこだよ? まだいんのか?」
「いやいやここにいるじゃないか。自己紹介まだでしょ? 彼の名前はコーリっていうんだ。ちょっと変わってるけど、凄い脳力の持ち主なんだよ」
「は? おいおい今更どうしたんだよ。あの増え続ける坊さん倒した時に挨拶したろ?」
「え?」
ん? なんか変だな……。
「ノブル君ラクタヴィージャ戦の途中から僕とコーリがシヴァ連れてくるまで寝てたじゃないか」
「え、嘘ォ!?」
なんだ、エラが言ってることが理解できないぞ……そこにコーリが割って入ってきた。
「ままま! 大したことじゃないんだしどっちでもいんじゃないかな? 夢の中で認知したっていうならそれも予知夢やデジャブみたいなものでしょ! たまたま他の世界線に進んだから変わっただけ~とにかく僕の名前はコーリだよ、改めてよろしくね~シシシ!」
「あ、あぁ……よろしくな」
なんか府に落ちないけど、まあいいや。
「はあ……はあ」
隣でノイが具合悪そうにしているのに気付いたころには既にノイは倒れる寸前だった。
俺は焦ってノイの肩を支える。
「おい……おい! 大丈夫かよ!?」
「ん……ちょっと疲れちゃったみたい……おかしいな~ごめんね、へへ」
「ノイちゃん大丈夫かい? 少し休んでから行く?」
「んーん、平気~。ノン君が肩貸してくれてれば大丈夫!」
「おいおい、あんま無理すんなよォ」
そうしているうちに、一つのドアの前に辿りついた。例のアナウンスが聞こえてくる。
「心の準備が整いましたら、そちらのドアの中へお進みください」
――心の準備だ?
まだなんかあるってのかよ。
「まだ終わって無かったみたいだね」
神妙な面持ちで、エラが口を開いた。
「ええええ……まぁ今のアナウンスの言い方だとそうかもしれねーけどよ……なんも無い事を祈るぜ」
「いやノブルさん、組織の人間と対面出来るんだったらさ、今まで酷い目にあわされたんだから復讐してもいいかも……シシ」
「ああそれはいいかもな、言いたい事だって山ほどあるしな。幻視見せて尋問してやろうか、ハハ」
エラはそんな俺らのくだらないやりとりが耳に入っていない様子で、会話に食い気味に一人ごちりはじめる。
「しかし『アター』だと……? まだ動作検証すら十分に済んでいないはずだ。そんな状態でこのメンツの脳力を解放するつもりか? 何を考えてるんだ……実験になんてなりゃしないだろう、下手すりゃうちゅうのほうそくがみだれ……何が目的……」
「お、おい……お前さっきから何ブツブツ一人で言ってんだよ」
「そうだよエラさん。どうせ何があったって僕らなら大丈夫でしょ、あっノイさんは何かあったらエラさん自慢の結界の中で休んでてね、キシシ!」
「ん、そうさせてもらおっかな、ありがと!」
まだ状況が飲みこめず、緊張感の無いやりとりを交わす俺たち。
――ただ一人、エラを除いて。
エラは先程から変わらず真剣な表情で、額から一筋の汗を流す。
そして少しの沈黙の後、口を開いた。
「みんな。ドアの向こうでこの後何が始まるかは、中で待っている一人の男から説明があると思う。――それとは別に、みんなに先に言っておきたい事があるんだ。どうせ中の男がその話に触れるだろうから」
その場の空気が妙な緊張感に包まれた。
「な、なんだっていうんだよ」
「――うん。黙っててごめん。あのね、僕はこの組織の幹部なんだよ」
――え?
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