第27話 新たな仲間

 ノイの顔のヒビはその後しばらくしても消える事は無かった。俺は今日一日あまりにも色んな事があったせいで感覚が麻痺してきていたんだろうか『きっと俺疲れてるんだろ、いつの間にか消えてるだろどうせ』などと、あまり気にしない事にしてしまった。



 ととととととととととととととととととと



「ノブル君が寝ている間に、新しい仲間が一人増えたんだよ」


「おう、どうやらそうみたいだな」


 その新しい仲間とやらの第一印象は――歳は高校生くらい、伸ばしっぱなしの髪の毛に猫背と……俗にいう根暗って感じだな。脳力の影響だというその見た目は色の白い部分と黒い部分が反転したり、点滅したりととても人間には見えず、『私は第四ステージの敵です』だなんて言われた方がよっぽどしっくりくる。


 まぁ取り合えず味方だって言うんなら、仲良くやってくのが得策だな。

「俺の名前はノブル。よろしくな」

「あたしも自己紹介まだだった! あたしはノイ、ノン君のアモーレだよ、よろしくね!」

「いちいち分かりづらい言い方しなくていいから」


「……」

 そいつは返事もせず、なぜだかニヤニヤしながら俺ら3人を順番にじーっと観察する。


 なんだこいつ、見た目だけじゃなくて中身も変わってんのか?絡みづらそうな予感しかしないんだが……。


 しばらくして、そいつが口を開いた。

「自己紹介どうもありがとう。改めまして、僕の名前はコーリだよ。ノイさんと同じCグループの被験者――要は拉致組の一人だよ」


「は!?」


 俺とノイは声を合わせて驚いた。拉致組ってどういうことだ?

 ノイは俺以上にビックリしたらしく顔を強張らせ、手を震わせている。


「そうだよね、記憶消されてるから覚えて無いよね。僕もここに連れられて来た時はノイさんと一緒だったんだ。気付いたらもう参加していて、第一ステージの開始を待たされてた。

でも第二ステージで生まれ変わりを体験した時に……たまたま思い出しちゃったみたい。ここの組織に拉致されて来たんだって」


 言ってる意味が分からない。なんだってそんな事……。


「……」

 エラは神妙な面持ちをして、口を挟む事無くコーリの話を聞いている。

 コーリが続ける。

「僕も何故自分が連れ去られて来たのか、理由まではわかんない。でもこれから先進むに連れてきっとそれもわかるんじゃないかな、って思ってて……それが今は楽しみかな、キシシ……」

 なんだか癇に障るような、妙な笑い方しやがる。


「……にしても……」

 コーリはまた俺らの事をまじまじと見つめながら話を続ける。



「そっか、君達……僕を含めた四人の中で、人間は僕一人しかいないのかぁ。今更もう何があっても驚かないけど……へぇぇ、なんだか凄いパーティだなぁ、キシシシ!!!」



「……はい?」

 突拍子もない発言に呆気に取られる。お前が一番人間っぽくないんだが!!


「なによそれどういう意味よー!!」

 隣でノイもぷりぷりしている。

 エラは……なんだ? さっきよりもさらに神妙な面持ちで固まってるぞ。

 お前、もしかして……


 ――――――腹でも、痛いのか?



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 その時、エラはコーリの存在に改めて脅威を感じていた。


『なんなんだ、コイツは……。彼は一体何者なんだ? 僕らの事を見て人間では無い? 何を根拠にそんな事を言っている……? 本当にそう理解して、そんな事を言っているのか? それともただの冗談なのか……全くわからない。

彼自身第二ステージで脳力を初めて手に入れたとさっき言ってはいたけれど、それも本当なのか?

自分が拉致組だと知っている理由だって本当に思い出しただけなのか? それとも彼は嘘をついている?

何もわからない。

とにかく最初にコンタクトを取って来た時のやりとりといい、僕の正体には気付いていると思っていた方がよさそうだね……場合によっては始末する必要もありそうだ。

最悪のケースを常に想定しておかなくては……』


 エラはそのような事をなるべく思考を盗聴されないように配慮しながら考えていたが、盗聴されていない、という自信は無かった。



 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「コ、コーリよォ、そういうお前も十分普通には見えねえぞ」


 ノイは隣でウンウンと勢いよく頷いている。


「言えてる~、キシシ! 何はともあれ、よろしくね」

 やれやれ。ペース乱されるメンバーばっかりだぜ。


「……とにかく、先に進めばノイがここに来た理由も分かるかもしれないって事なんだな?」

「そういうこと! なんにせよクリアーしないと帰れないみたいだしさ! 力を合わせて頑張りましょうみなさん、キシシッ」


 ま、コーリのいうことはもっともだ。そうして俺らは先へ向かいはじめた。



 とととととととととととととととととととととと



 また、ただただひたすら歩く時間だ。ラクタヴィージャと遭遇する前までと同様、全員口数少なく何か考えごとでもしているのか、ただボーっとしている様な面持ちで目的地を目指して歩いていた。


 まあそりゃそうだわな。決して楽しい旅でもなんでもねえもんな。

 しかし……あのコーリってやつの言っていることが本当だとしたら、なんだってノイは拉致されたっていうんだよ……拉致する対象の人物は特定の人物である必要は無く、ただ拉致しやすそうな人物を狙ったってだけだったり? ま、ノイは見た目からしてどんくさそうに見えるから、この推理はあながち間違いじゃないかもな、ハハ。


 俺はそんなふざけた思考をめぐらせる事でなるべく楽観的でいようと思ったが、それも続かず次第に不安な気持ちに駆られていった。


 いや、だとしたら逆に……気持ち悪いよな。

 だってたまたま抽選でモニターに選ばれた俺と、たまたま簡単に拉致出来そうだからってノイが選ばれただなんて、そんな偶然が起きる確率って一体どれほどなんだ? 宝くじが何回でも当たりそうな気がするぞ……。

 ノイが脳力を開花させ、すんなり受け入れている事も気になる。


 なんなんだよ……考えても答えなんか出ないんだろうけど、なんか引っかかるな……。



 オン……ベイ……シャノウ……ボダラ……



 砂漠の熱さが、意識を朦朧とさせる。それが一層、一抹の不安を雪だるま式に膨れ上がらせていく。



 

 マ……ハンドマ……ンバラハ……バリタ……ウン



 ん、なんださっきから……空耳か? 低い念仏のような声が聞こえる。気味が悪いな、いつから聞こえてたんだ?



 オン……キャベイ……シャノウ……マカボダラ……



 やべ……目が霞んで来た。もしかして熱射病? 目を開けてるのか閉じてるのかもわからなくなってきた。



 オンアボキャベイロシャノウマカボダラ



 みんなどこだ? いるのか?

 おーーーーーーーい、と言いたいところだが声が出ない。声の出し方が分からない。



 マニハンドマヂンバラハラバリタ ヤウン



 うわ。

 足が砂に取られる。そしてそのまま俺は蟻地獄の巣に迷い込んだ蟻の如く、砂の中へと体がどんどん飲まれていく。


 みんなどこだ? おい! 返事してくれ!! おい!!!!






 わあああああああああああああああああああああ……

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