第5話 誰だ、お前?

朝。案の定、昨日は一睡もできなかった。ひまりは普通に寝れたらしい。

「クマがすごいですよ。ついに呪われたんですか?」

と、いつも通り饒舌だった。

「呪われてはいねーよ。ただ昨日はなかなか寝付けなかったからな。」

と、言うとひまりはとてもつまらなさそうに

「呪われていないんですか。じゃあ私が呪ってあげましょうか?」

ニコニコ顔で言いやがる。

「…怖いこと言うなよ。お前ならマジでやりそうで2倍怖い。」

「私ってそんなに怖いですか?」

「ああ、それに普段の言動が俺に対してだけ尖り過ぎてるからな。」

「そうですか…。」

「お前絶対反省してないだろ。」

「はい!」

うぁ〜。さっきより2倍怖い笑顔だわぁ。

「そんなこと言ってねぇで制服とってくれ。」

「そんな物、自分で取ってください。」

「主人の物をそんな物とはなんだ、そしてお前はメイドだ!」

「いつも言っていますが逆ですよ。」

「その冗談いつまで続けんだよ。」

「現実逃避です。クズな雄大君につかえていることからの。」

「クズって言うのも大概にしろ!」

「嫌です。これはやめません。」

「お前は変なとこ強情だな。」

「こんな茶番やっているとまた遅刻しますよ。」

はい、と言って制服を渡してくれた。

「サンキュ。」

制服を丁寧に着ると、

「じゃ、行くか。」

「はい。」

少し早足で家を出る。

「あんま俺を待ってなくても、先言っていいんだぞ?」

「いいえ、私が起こさなきゃ雄大君が自力で起きなさそうなので。それに雄大君が遅刻だらけだとあなたのお父さんに怒られそうなので。」

「俺は自力で起きれるし、2つ目の理由が最低だ。」

「冗談ですよ。」

「お前の冗談はシャレになんねぇんだよ。」


喋りながら歩いていて曲がり角に差し掛かった。すると、よくラブコメである出会い頭に衝突ということが起きた。

「わっと。すいませ…ってあ!お久しぶりです橘先輩!」

そういったこいつは中学生ぐらいだろうか、制服を着ていて黒髪のポニーテールで発育途中の体に低めの身長、おれを上目遣いで見てくる。

「…誰だ、お前?」

と、言うとえーっと落胆したような大袈裟なそぶりを見せる。

「忘れちゃったんですか?私ですよ。私。」

「オレオレ詐欺の女版ですか?」

「ちっがう!喩阿ですよ!乙川喩阿です!先輩が中学の時2年でした!」

なんかとても表情豊かで元気な子だなぁ。でも全然覚えてないとは言えない。

「ま、まぁよろしく。」

「ちょっとスマホ貸してください。」

と、かばんをあさられスマホをひったくられた。

「今急いでるんで、後でここに連絡ください。てか、連絡先少ないですね。」

「ほっとけ。」

俺のその言葉を最後に喩阿は走っていった。

「嵐の様な子でしたね。」

「そうだな。てか、お前あいつがいた時静かだったな。」

「ちょっとあのタイプは苦手ですね。」

「ふーん。お前にも苦手があったんだな。」

今度から喩阿のまえでは調子乗ってやろう。

…後が怖いからやめておこう。

「さ、俺たちも学校行こう。遅刻する。」

「そうですね。本当に遅刻したら、雄大君のせいにします。」

「…へいへい。」

後で喩阿に色々聞いとかなきゃな。全く覚えてないし。とりあえず、ひまりの相手を頑張ろう。てかヒロインっぽいの増えてね?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る