第8話 退院
2月16日に病院に飛び込んで10日目。
やっと退院の話が具体化してきた。
2月26日(日)
昼食はとうとう普通食になった。
「先生!ご飯にふりかけかけていいですか!(必死!)」
「いいですよ。もう普通食ですからね。もちろん常識の範囲でですよ」
のばをなんだと思ってんだ?多分目つきが尋常じゃなかったんだろう。
「先生、いつ退院出来そうですか?」
「そうですね~。普通食にして二日くらい様子を見て数値が安定化してれば退院ですね」
「具体的には?」
「3月1日の朝検査して数値が安定してれば3月2日かな?」
うーん、それじゃ遅いんだよな。
1日に出さなきゃならない書類が山盛りある。(いなきゃいないで何とかするんだろうけどさ)なんとしても2月中に帰りたい。
「先生、何とかなりませんか?」
「何とかって言っても石はもうとれてるし、数値が安定化してればいいんですけどね」
「じゃあ2月27日は?」
「27日の朝の数値が良ければオッケーですよ」
「じゃあそれでお願いします」
2月27日(月)
運命の朝、7時採血が行われた。
10時、先生が来た。
「・・・数値も安定化してますね。これなら問題ないでしょう。もちろん後二日くらい入院するのがベストなんですよ。ムリはしないで下さいね」
ムリするに決まってるじゃん!
二週間も休んでたんだよ。仕事溜まってるんだよ。やる事山盛りだよ。
昼食後、看護師さんが点滴の針を外してくれた。入院以来ずっと刺さってた針がなくなった!やったぁ退院!!
そそくさと着替えて退院準備だ。
入院代払ってはれて自由の身になったど~!肉食うぞ~、
ローソンのエルチキにするか、
セブンの揚げ鶏にするか、
それともファミマのファミチキにするか!
悩みどころだぜ~♪
お、コンビニが見えた。ローソンだ、エルチキに決定~!
・・・ん気持ちはエルチキに向かってるのに身体が行こうとしない。え?食いたくない?身体が欲していない!?どういう事だ?
脳と身体が別の事考えてる!
うーむ、今日のところは身体の言う事を聞いてやろう。今日だけだからな!!
諦めて帰ろうとジャンパーのポケットに手をつっこむ。ん?違和感?
何だっけな~、何か足りないような・・。
携帯はあるし、サイフもある。
ハンカチもあるし~・・・・・鍵がない!!
のわ~ー!帰れん!
いや、帰れるけど家に入れん!
いくら春とはいえ、外で子供達が帰るの待つのは辛い!どこだ、どこなんだ?
とりあえず通勤カバンの中を探る。
(会社からそのまま入院したからね)
ない!
着替えとか入れてるカバン……は路上で広げる訳にはいかんな。参った。
ん?ここはうちの会社の支店のすぐ近く。店長はよく知ってるO田くんだ。電話だ!
「O田くん、悪いけどちょっと休ませて」
「のばさん、どしたんすか?」
「いやちょっと退院中」
「はぁ?話が見えないんすけど」
「いいから休ませて~」
「いいっすけど・・」
事情を説明して中に入れて貰う。
「はぁ、相変わらずのばさんすね~」
どう言う意味だ?
「一週間絶食してた割には全然痩せてないっすよ。ホントに入院してたんすか?」
たった今退院したばっかりじゃ!
もともと痩せてて落ちる物がないの!!
O田くんが仕事に戻ったのでカバンを漁る。
ない!
病院に落としたのかも。入院してた病院に電話する。
「ないですよ~」
最初に飛び込んだ病院にも電話する。
「ないですよ~」
万事休すか?
念のため家に電話してみる。
トゥルル~トゥルル~♪ガチャ
「あ、とーさん?」
「あれ?1号、何でいるんだ?」
「試験期間で早帰りじゃ、どした?」
「どしたじゃねえよ。今日あたり退院するって言ってあったろ」
「お、ああ、そうそう、もちろん覚えてるよ」
忘れてたなてめ!
「いいか、よく聞け。大切な事を言う。
とーさん、家の鍵をなくしたみたいだ。
今から家に帰る。多分30分ほどで着くと思うから、それまで家を出ないでくれ!分かったな」
「らじゃ!でも……」
「でも、なんだよ?」
「とーさんの鍵、ここにあるよ」
チャンチャン♪
完
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