最強の吸血鬼が異世界に行くそうですよ?

神々しい大根

第1話プロローグだそうですよ?

吸血鬼、またはヴァンパイアという名前を皆は聞いたことが有るだろうか。

 腕力は人間を超え、体の大きさを自由に変えたり、コウモリや狼などの動物、霧や蒸気に変身でき、どんな場所にも入り込み、また、催眠術やフクロウ、コウモリ、狼、狐、昆虫といった動物、嵐や雷などを操るとされる。

 聞いた話によれば、トランシルヴァニアの伝説を元にした『ドラキュラ』は現代の吸血鬼のイメージに強い影響を及ぼしており、『ドラキュラ』の登場人物の一人であるヴァン・ヘルシング教授は、吸血鬼を「怪力無双、変幻自在、神出鬼没」と称したらしい。

 その『ドラキュラ』もとい吸血鬼の有名な特徴としては

・日光を浴びると弱るため、昼間は墓地や洞窟などに身を隠す。

・緩い水流や穏やかな海面を歩いて渡る。

・ニンニクや匂いの強い香草等を苦手とする。

・金属の杭を心臓に打ち込めば死亡する。

・鏡に映らない。

といったところか。

 しかしこれは本当の事も書いてあるが大抵は嘘っぱちだ。

 日光に弱いのは吸血鬼が低血圧だから。決して灰になったりなんかしない。洞窟に引きこもるっていうのは噂になったやつの拠点が洞窟だったのだろう。

 海面とか水面を渡れると言うのは本当。正直なところ吸血鬼に地形は関係ない。だって吸血鬼にはコウモリのような翼があるから。翔べば問題なし。

 杭を心臓に打ち込めば死亡するって・・・人間でも死ぬだろ。

 鏡に映らないのは嘘。それは顔が不細工な吸血鬼が徹底して鏡に映らないようにしていた事から出来た噂だ。

 

 何でそんなことが解るのかって?それはだな・・・


「ほら、王!早く起きないと遅刻しますよ!」

「ぐおおおお・・・太陽の光がぁ・・・我の身体をむしばむぅ・・・」

「・・・何言ってるんですか・・・我ら吸血鬼は太陽の光は効かないって分かってて言ってますよね、それ・・・」

「ほんの吸血鬼ジョークだ。と言うわけで後五分・・・ぐー」

「二度寝!?というか何が『と言うわけで』ですか!ほら、もう八時ですよ!」

「何、八時だと!?いかん、学校に遅れてしまう!セイラ、何故早く起こしてくれなかったのだ!」

「さっきから起こしてましたよぉ!」


 ・・・そ、それはだな、我と彼女自体が吸血鬼だからだ。

 いかん、遅刻する!


――――――――――――――――――――――――


 我が名はアルス・バーンシュタイン、仮の名を田中みのると言う。仮の名に意味はない。某検索アプリで日本で一番多い名前で調べたら出てきたから使っただけだ。

 種族は当然吸血鬼、しかも唯の吸血鬼ではない。さっきセイラが言っていた通り我は吸血鬼の王、種族名を「吸血鬼の皇帝ヴァンパイアロード」と言う。

 ・・・まあ、王とは言えども西暦1634年に起きた人間共との全面戦争により、吸血鬼は絶滅。残ったのは我とセイラだけであったために成り行きで王位に就いたに過ぎない。

 因みにその戦争で我が先陣をきって突撃し戦場で獅子奮迅したのだが・・・種族が絶滅した今ではどうでもよい。過ぎた話だ、蒸し返すつもりもない。

 今は吸血鬼であることを隠し、日々勉学に勤しんでいる。


「セイラよ!早く我の愛車、『ソニックサイクロンVファイブ』に乗るのだ!」

「王、何度も言っておりますが唯のママチャリにその名前は如何いかがなものかと・・・」

「うるさい!この『ソニックサイクロンV』は通常の1.2倍のスピードが出るのだぞ!どうだ凄いだろう!?」

「いや、どうだと言われましても・・・それ、こぎ手の問題じゃないですか・・・」

「いいから早く乗れ!王である我の命令だ!」

「こんなことで王様権限使わないで下さいよ!」


そんな会話をしながらセイラは我の後ろに乗り、腰に手を回す。


「よし、乗ったな!うおおおおお唸うなれ我の『ソニックサイクロンV』!」

「吸血鬼の力を全力で使わないでええええぇぇぇ・・・」


これが我とセイラの何時もの風景だ。

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