12話 ジャパリパーク

@sou0802

第1話

サーバルちゃんは逃げられたかな

混濁する意識の中でそれだけははっきりと頭をよぎる。悲しいとは思わなかった 消えて行くというのに嫌に冷静だった サーバルちゃんを守れたんだから もうそれで…

………!

黒い体が向きを変える 意識がはっきりとする

そっちは…!

黒い体は無慈悲にもサーバルちゃんの方向へ進んで行く

助け…なきゃ…

意識を強く持とうとするが

そん…な…

体が動かない 黒い穴がサーバルちゃんに近づく。

どうしようもできない。意識も…とても眠い… その弱肉強食の光景の中で一つの言葉をつぶやく。

「また…」

また…?これは…誰の…きお…

あなただーれ?

びっくりしたよー!飛んでくるなんて宇宙人かと思ったよー!

サーバル…ちゃん?

何あの爆発?山の方からだよ!

そっちに…行っちゃ…

何あの黒いの?

ダメだ!

視界が開けた 地面にぶつかる

お前らのせいであいつがこっちにこねぇじゃねぇかよ!ヒグマさん!?

黒いセルリアンがこちらを向く

チッ あいつ連れて逃げるぞ! 持っていた松明を投げる セルリアンが逆向きに向かう

ヒグマに抱きかかえられて下に飛ぼうとする

僕は咄嗟に叫ぶ 山頂に向かって!

はぁ?とヒグマ いいから!

冷静になれずにお前らを助けちまったんだ?ら作戦もクソもねぇ!行ってやるよ!やるからなんとかしろ!

黒いセルリアンにエネルギーを与えるのはあの山の火口だ。与えることができるなら奪うこともできるかもしれない。曖昧な思考の中で無理やりのこじつけだ。ただ下に行ってもどうしようもない気がした。

僕はさっきの記憶を呼び覚ます

過去の火山の大噴火…セルリアンの大量発生…ヒトとフレンズに出た被害…

整理がつかない これは…誰の記憶だ…?

そんなことはどうでもいい 誰かが示してくれた道だ…ヒントだ何をすべきかを考えるんだ

考えること それがヒトの得意なことだ

「かばん」 ボスが帽子を渡してきた ありがとうと返す。

返事がない。ボスの目が虹色になっている。

僕は僕のやれることをするんだ。赤と青の羽がついた帽子を被る。

「誰か」の記憶が自分に知識をもたらす

まるでこの窮地を脱することを心から望んでいるかのように

サンドスターは2つの種類が存在する

無機物と結びつく黒いサンドスター

フレンズを生み出す輝きのサンドスター

四神のフィルターは黒いサンドスターを遮断する

飛行機…爆撃機…やっぱりだ。あの曖昧な思考は適当に出てきたものじゃなかった。

海が苦手というならば兵器で上から思いっきりかけてやればいいはずだ。あの黒いセルリアンが海を怖がるのはもっと…別の深い理由があるはずだ。少なくとも落とすだけじゃ…

おい!着いたぞ!思考を切り替える。

そこで

う、ん

サーバルちゃん!

サーバルちゃんが目を覚ました。

かばんちゃん!

2人は抱き合った

僕は安堵した。サーバルちゃんの記憶が消えたらと思うとすごく怖かった。

サーバルちゃんはまた泣いていた

かばんちゃん! 私!前に…ここで!

サーバルちゃんもだったみたいだ

ただ僕よりも深く…誰かの記憶があったみたいだ。

ミライさんって…わかる?

?ミライさんがどうか…

記憶が一気に鮮明になる

おい!感動の再会は分かるが今はそんな場合じゃ!

サーバルちゃんの手を掴んで火口に駆け上がる。

おいヒグマ!どこにいるんだ!キンシコウ達の声が聞こえる。

あいつらのとこに行ってくる ちゃんと約束は守れよな!ヒグマが飛んでいく


最後までごめん。ちゃんとついてきてくれる?言わなくても分かるでしょ?私たちはずっと一緒だよ!今やろうとしてることが失敗するかもしれないよ?かばんちゃんのこと

信じれないわけないでしょ!

僕たちは石版を集める

フィルターが解除されました

僕は黄龍の石版を、サーバルちゃんは四神の石版を持って火口に飛び降りる。

火口の奥底でフィルターを起動させる

隣を見る。サーバルちゃんはこんな時でも笑って僕を見守ってくれた。


押さえつけられたサンドスターが一気に放出される。僕の考えはこうだ。黒いサンドスターはローサンドスターと言われる ローは生のという意味だ。つまり輝きのサンドスターはフィルターによってセルリアンを生み出す部分を通さずにカットしたものでもあるんだ。

元は同じ物質のはずだ。あとはこれが氷が水と一緒になって大きな氷になるか、水になるかだ。山の上から空を見る。2つの種類のサンドスターは黒のセルリアンに向かっていく。安心したのもつかの間・・・黒い・・・

体がこわばったその時だった。

周囲からさらに強い輝きのサンドスターがそれを包み込んだ。その集まりはどんどんと遠くから。その輝きは今まで見たどんなサンドスターよりも強い輝きだった。

フレンズたちがみんな願っている様子が見えた。

なんでこの状況で焦ってないんだ!?逃げてないんだ!?そう思った。

目を凝らすと虹色の粒がたくさんみえた。

かばん 名前を呼ばれて後ろを見る ボスが頭を近づけて言った。僕も頑張ったよ。褒めて。

僕はボスを抱きしめた。するとサーバルちゃんが私も!と近づいてくる。3人でしばらく抱き合う。自分たちも強い輝きを帯びていた。

サンドスターが奪われたら記憶が消えてしまうんじゃないかと思ったがそんな心配はいらなかった。その大きな輝きは飛散し、ジャパリパーク全てを包み込んだ。

黒い姿はもうなかった。

その暖かい光景の中で

全てが美しくて、愛おしかった。

僕は決めた

この場所を

ジャパリパークを

この輝きを永遠に…

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