禁じられた“しつもん”
arm1475
序。
“しんりんちほー”にあるジャパリ図書館を目指していたかばんちゃんとサーバルちゃんたちご一行の冒険は続く。
いつからだろうか。ジャパリバスジャパリバスに揺られながら、かばんちゃんはずうっととなりにいるサーバルちゃんを見つめていた。
多分、最初に出会った時からずうっと抱いていた、ある疑問であった。
サーバルちゃんはバスの中に差し込む、心地よい日差しの温もりで寛いでいた。その頭から伸びているトンガリ耳は、気分が良いと時々ピクピク動く事を、かばんちゃんは最近気づいた。
だからこそもその疑問がどうしても頭から離れようとはしなかった。
思えば、サーバルちゃんだけでは無い。頭から大きく耳を生やしているフレンズたちすべてがそうであり、それに気づく度、かばんちゃんの戸惑いは心の中で少しずつ山のように積み重なってきた。
それが崩れるきっかけには意味が無かった。
ただ、何となく。陽気のせいで緩んでしまったからなのかもしれない。
「ねぇ、サーバルちゃん」
「なーに?」
サーバルちゃんはいつものように屈託の無い笑顔でかばんちゃんに応えた。
「ひとつ、きいていい?」
「いーよー」
「なんで耳が四つあるの?」
不意に、順調に走っていたジャパリバスが急停止する。
『――』
運転していたラッキービーストが二人のほうへ振り返った。何かを言おうとしている様子だったが、動揺しているのか声がノイズ音にしかなっていない。
今のかばんちゃんはその事に全く気づいていなかった。
目の前に居る、いつものように微笑んでいるサーバルちゃんから目が離せなかったからだ。
いつもの、朗らかな笑顔。
なのに、何か違う。
その差が何なのか、記憶喪失のかばんちゃんをして、本能が理解させていた。
まさに、捕食者のそれだった。
その朗らかな笑顔のパズルにあるハズの無い殺意のピースが、かばんちゃんを凍り付かせていた。
「ん? かばんちゃん、何か言った?」
サーバルちゃんはその頭の上に生えている尖った耳をピクピク動かしながら訊いた。
「――」
固まっていたかばんちゃんは声にならない声を発する。恐怖がのどを麻痺させていた。
「――な、なんでも、ないよ」
それでもかばんちゃんは声を絞り出した。死にたくない。その一心だった。
「なーんだ、きのせいかぁ」
それを聞いたサーバルちゃんから殺気が霧散した。いつもの笑顔。
ようやくかばんちゃんは安堵のため息を漏らした。
『かばんちゃん』
気の抜けたかばんちゃんは、ラッキービーストが声を掛けて居る事に直ぐには気づけなかった。
「あ、な、なに」
『禁則事項』
「き、きん、そく?」
『フレンズに二度とそれを訊いちゃ駄目だよ。危険だから』
「う、うん」
かばんちゃんはまだ動揺しながら頷いてみせた。
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