クリミナゴッデス・キル・ザ・アラクニド
ゴッドさん
プロローグ 魔蟲種という敵
それは、動く山だった。
頂上が天へ届きそうなほどの巨躯が大地を遥か遠くまで揺らし、咆哮が大気を震わせる。空の青を黒に塗り潰し、漆黒の甲殻に覆われたハエトリグモのような怪物がその体格を武器に、人間の街を次々と踏み潰していく。何年もかけて築かれた都市は一瞬にして瓦礫へと変化した。
あれは本当に生物なのだろうか。
その化け物を遠くから見ていた人々は呟く。
彼らはこの世界に突如現れた化け物たちだ。昆虫や節足動物を連想させる姿をした、人間を見境なく殺して回る異形の集団である。
様々な形態を持つ彼らだが、中でもその巨大な魔蟲種は特異な存在であった。今までその種が確認されたことはなく、初めての出現に軍隊も打つ手がなく蹂躙を許してしまう。何発もの砲弾を撃ち込もうが、傷一つ付かない。
あの魔蟲種に世界は滅ぼされてしまうのだろうか。
多くの目撃者が絶望に駆られていたとき、群衆から一人の少女が動き出す。人々が避難する方向とは逆に歩き、その魔蟲種へ立ち向かっていく。
「な、何をやってるんだ、そこのお嬢ちゃん!」
「あんた、あの化け物に殺されたいのかい!」
彼女に気付いた数人の避難者が呼び止めるも、その足は止まらない。
やがて化け物の近くまで辿り着いた少女は足元の砂地に指で円形の魔法陣を描いていく。
「お願いです、勇者さん」
少女がその言葉を発した瞬間、強い風が吹き、彼女の長い金髪が揺れる。
「クォォォン……!」
辺り一帯は魔法陣から放たれる白い光に包まれ、化け物の悲鳴が轟いたのだった。
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