魔術世界の玉座≪いす≫取り戦争≪ゲーム≫-神話大戦大陸・アトランティアー

七四六明

開戦

参加者

 今年も席が空いた。毎度のことだが、寂しいものだ。

 以前のトップはよくやってくれたが、死んでしまってはしょうがない。人間の寿命はよくわからないものだ。百年生きる者もいれば、六〇年で死ぬ者もいる。彼も若い頃は素晴らしい魔術師だったが、老いには勝てなかったらしい。

 まぁともかく、空いた席は埋めなければならない。玉座に座るにふさわしい実力者を選ぶには、やはりこれしかない。今回も、やる。

 参加者は九人。歴戦の勇士に絶対の王、地上では名高い魔術師ばかり。だがそうでなければ、魔術世界の頂点たるこの天界の玉座は見合わない。

 さて今回はどうしようか。前回は大魔術師と呼べる魔術師ばかりだったし、今回は少し趣向を変えてみようか。

 まずは一人目。白花の騎士王国、エタリアの騎士団副団長。魔術の才には少し欠けるが、その剣術で三度の戦に貢献した。冠する名を、純騎士じゅんきし

 続いて二人目。ここ天界にて反逆の罪に問われ、地上へと堕ちた男。灼熱の魔術を使い、今も生き永らえている天使。冠する名を、魔天使まてんし

 三人目。黄金の帝国ヴォイの皇帝。千年もの間生き続ける不死身の体を持った大魔術師。冠する名を、骸皇帝がいこうてい

 四人目。世界全土の情報と資料が集まる国、リブリラ——別名図書館より。二十年間ずっと国に籠り、世界の事象をすべて書き記した男。冠する名を、永書記えいしょき

 五人目。異世界の名もなき監獄より。異形の姿に刻まれた魔術により、戦うことだけを許された怪物。冠する名を、異修羅いしゅら

 六人目。国を持たない暗殺者。無数の魔術と顔と姿を持つ、一人であって多数の人間。冠する名を、重複者じゅうふくしゃ

 七人目はここ天界より。世界で最も神に近い一族の血を引く天使。時を司る幼き大魔術師。冠する名を、翔弓子しょうきゅうし

 八人目。名もなき小国のこれまた小さな孤児院より。世界で最も強い龍の一族の血を持つシスター。龍の鱗と灼熱を持つ魔術師。冠する名を、龍道院りゅうどういん

 そして最後の九人目。冥府の深き深淵より。その存在は人か怪物か、はたまたそれは生物なのか事象なのか。魔術によって生まれた生きる魔術。冠する名を、滅悪種めつあくしゅ

 ふむ、素晴らしい人選だ。これなら誰になっても申し分ない。何問題児になれば、こちらで操作してやればいいだけのことだ。

 あとは場所だ。どうしようか。前回こちらで人工島を用意したが、跡形もなく破壊されてしまった。毎回それでは、恥ずかしいが予算が厳しい。

 そうだ、あそこにしよう。遥か昔に神話大戦が行われた、歴史ある地だ。あそこなら、多少の破壊行為はこちらでなんとかなる。そうしよう。

 他の席も、異議はない様子。よし、ならばこれで行こう。

 第九次玉座いす取り戦争ゲームの、開戦だ。

 

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