第2話 鬼平「むかしの男」とあいまいみー「ルール」

 鬼平の「むかしの男」では、鬼平の妻・久栄の昔の男に対して鬼平が男を魅せる話。一方、あいまいみー「ルール」は非処女であることが発覚した女性声優をユニコーンが襲いかかる話だった。


 いってしまえば、愛する人が処女であるかどうかを題材にした話だったわけだ。(んなわけねーだろってツッコみたい気持ちは置いておいてくれ)


 「むかしの男」では、久栄の昔の男がよほどのクズ。金を脅し取りに来た上に鬼平の娘を誘拐して火盗改メに拿捕された小物だった。その小物が鬼平に対して「久栄のはじめての男は俺だ!」と喚くも、ハハハと笑い飛ばして鬼平が一言。「そんなくだらんことを。久栄はな。今も昔もいい女よ。これからもずーっと、俺が女よ」と惚気けてみせる。


 男としての器の大きさを見せつけたわけだ。


 対して、あいまいみー「ルール」は非処女であることが発覚した女性声優とのツアーでファンとして参加していた少女・まいが「これで一緒に死ねるじゃん。役目を終えた大好きな声優さんと一緒のリズムで天国にいけるなんてとってもハッピーなんだよ」と一言。その後、幻獣ユニコーン(処女には従順だが非処女は殺す伝承がある)へと姿を変じて声優・めぐみんを襲撃する。


 処女厨の狂気っぷりを描いていた。


 鬼平は夫婦愛(真)であり、あいまいみーは声優愛(歪)である。そもそもの関係性が違うのは承知の上で、処女厨を取り扱った作品だといえるだろう。どちらが正しい姿なのかを聞くのは、それだけ野暮だ。しかし、考えざるを得ない。


 処女厨といえば、太宰治が思い浮かぶ。人間失格だ。「非処女とセックスをすると、その最中に前の男と比べられている気がする。だから嫌だ。商売女は、数え切れないほどしていて、逆にそういうことはない。だから安心する」のような旨のことが記されていた。


 鬼平のむかしの男も、そうした心のわだかまりを狙って詰った。だが鬼平は「お前のことなんざ覚えちゃいねえよ。俺が忘れさせちまったからな」と言わんばかりに笑ってみせたのだ。


 かつての経験よりも、今が大事。未来もずっと連れ添っていることが大事。何が大事かでいえば、それに限る。


 一方、あいまいみー。こちらはファンとしてのアイドルである。ぶっちゃけてしまえば、処女であっても非処女であっても、どうせセックスなんてできない相手である。相手に触れられない関係性だからこそ、その色を塗り替えることもできない。だから真っ白な存在を求めるのは当然なのかもしれない。


 あくまで商品だ。アイドルや声優にとって商品価値のひとつに「恋人がいない」がある以上、たとえお相手がいたとしてもそれを隠すべきではないか。夢を売るとはそういう商売なのではなかろうか。それもまた、ひとつの真実だ。


 だが、世界で一番可愛い王国を気付いた某声優のファンたちは、「はやく結婚してくれ」「いつになったらお相手が」と心配しはじめている。商品価値としての処女に頼る必要もないアイドルとしての価値が確立すれば「恋人がいない」を価値から外すことも可能なのだろう。


 鬼平に関しても、実は同じなのかもしれない。相手が処女だろうがどうだろうが関係ない。そんな相手を見つければ、連れ合いになってくれれば、それが幸せである。処女か非処女かだけで切り捨てれば本当に大事なひととの出会いを失ってしまう。


 ちょっといい話風にできたので、ここで話を終えるとしよう。

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