クソ上司をぶん殴ったら、異世界に飛ばされた。~そして俺はチートを手に入れ、ブラック企業を改善する!/スフレ

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第一章

プロローグ 異世界に飛ばされた。


 どんより。

 重い空気が社内を支配している。

 現在の時刻は12時――本来であれは昼休憩の時間。

 だが――誰も食事に立とうとする者はいない。

 虚ろな瞳でまるで感情のない機械のように、奴隷サラリーマンたちは仕事を続けている。

 生きている意味ってなんだろう?

 この会社に入社してから、俺は毎日そんなことを考えるようになっていた。


「聞いているのかこの無能がっ!

 キミはやる気があるのかね!!」

「……申し訳ありません」


 昼休みになったというのに、上司の罵倒はやまない。

 かれこれ2時間ほどは続いている。

 今まで最長で8時間ほど罵倒が続いたことがある。

 平均は5時間くらいなので、あと3時間は罵られ続けるのだろう。

 どちらにしても、今日も残業は確定だ。


「キミのようなクズが、よくうちの会社に入れたもんだ」


 生活雑貨関連の会社に入社して、既に三ヵ月が経っていた。

 企画部に配属された新人は、俺――やしろ白真しろまを除けばもういない。 

 俺だけが逃げ遅れてこの有様だ。

 入社初日から――明らかに空気が悪かった。

 振り返ってみると、この時に逃げれば良かった。

 ここで頑張ろうなどと思ってしまったのが俺の失敗だ。

 入社初日から泊まり込み。

 仕事をこなしては罵倒。

 トイレに向かうために席を離れては嫌味。

 最終的には許可を取れと言われる始末。

 社内にはおむつを付けて働いている先輩方もいる。

 言われた通りに仕事をしても、


『勝手な仕事をするなっ!』


 こんな怒鳴り声が上がり、再度指示を仰ごうとすると、


『聞く前に自分の頭で考えろっ!!』


 などと矛盾した発言のオンパレード。

 一方的な怒鳴り声というのは、割と人の精神を疲弊させるものだと初めて知った。

 この会社に入ってから、初体験ばかりだ。

 たとえば、徹夜続きの毎日。

 3日目以上の徹夜で、幻覚が見えてきたこともあった。

 5日目からは亡霊が見えた。

 先輩たちに、


『そういう経験はありますか?』


 と聞いたら、今も見えているよと真面目で顔で返された。

 そんな話をしていたら、無駄話をするなと罵倒された。

 ちなみに定時は過ぎていた。


 こんなクソ上司の下で、今までよく我慢したと思う。


「聞いているのかね?」

「ええ、聞いてます。

 だから言わせてもらいますが――」

「あ? なんだ無能?

 ゴキブリ以下のゴミ屑が、人の言葉を理解でき――」


 だが、もう我慢の限界だった。

 だから俺は拳を握り腰を回して、


「無能はてめぇだこのクソ上司がああああああああああっ!!!!」


 ぽっかりと口を開き間抜けな貸した上司の顔面に、渾身のストレートを喰らわせてやった。

 ボゴッ! という感触が拳に伝わる。


「ほごおおおおおおおおおおおおおおおおっ!?」


 ぶん殴られた上司が、アホみたいな悲鳴をあげた。

 その瞬間――眩い光が俺を包み、


「あなた、よくやったわ!」

「は?」


 クソ上司の姿が消え、俺の目の前には女神の如く美しい絶世の美女が現れたのだった。


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