雷のイニシエーター

どみ

α: すべての始まり

 



 暗闇の中で、静かに息を吸う。



 わずかに錆びた鉄のにおいがした…。




 道は狭い…。少女がやっと通れるほどの広さしかなかった。そして、暗い…。光はどこにもなかった……。



 心が落ち着く。暗くて狭い場所は、私たちの本拠地ホーム。それは、空中戦を得意とする敵が、踏み込んでこれない場所でもあった。束の間の安堵と平穏。空気が薄いせいか頭痛がひどくなった気がした。


 

 酸素が薄いのは、訓練で慣れているからさほど気にならない。問題は、時空酔いだ。私は時空移動タイムスリップをあまくみすぎていた…。




 足がもつれる。くらりとめまいがした。



 ―そろそろ限界か。



 足が前に出る。手が、壁をつかむ。



 体全体が抗っている。死んではいけないと…。


 



 そのとき、地面を引き裂くような音がした…。世界が大きく振動し、きしんでいるような気がした。


 

 ―雷か…。




 雷…それは私の敵。なぜかそう思った。自分でもよくわからない。


 

 空気が動いた。目の前の闇が、ほんの少し薄らいでいる。一歩一歩、踏みしめて歩く。暗く狭い横穴から、忘れさられた工事現場のような場所に出た。


 


 

 そして、彼女は空高く飛び立った。

 


 


 


 

 

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