僕はそれを信じてる~Twilight Alley ~

嘉田 まりこ

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 鏡に映る美しい顔を見ていた。

 窓辺にかけてある十字架のクリスタルが朝陽を纏ってキラキラと輝き、部屋中に彩りを加える。

 厨房からはオリーブオイルに放たれ焼かれるニンニクのいい香り。

 それを嗅ぎながら流し込むレッドアイは格別だ。


 今日も1日楽しくな……


「おらぁぁ!キュウ!てめーさっさと降りてきて仕込み手伝え!」


 無駄にデカい声と無駄に長い足で、そう怒鳴りこんできたのは魔界の王子、タ・ムーア・ゴルディ・ハクナ・ランジェット17世。

 通称たまちゃん。


「仕込みはうっしーがいるじゃない」


 あ、このうっしーってのは牛男ミノタウロス。働き者のいい奴だけど『ふんもお』しか喋れない。

 同じ魔族の僕たちは何て言ってるか分かるけどね。


「あの牛、あの肩に乗せてる変な鳥とどこかに行きやがったんだぁぁ!」


「じゃあ、ほら、わびちゃんは?」


 あ、わびちゃんってのは狼男・わびすけ。

 まぁ、こいつは……


「あいつはなぁ!玉子の黄身見てチワワになっちまったんだよ!」


 ……うん。何故かはわからないけどね、満月意外の丸くて黄色いものを見ちゃうと狼じゃなくてチワワになるんだ。

 狼男なのに、ワケわかんないよね。

 ごめんね、ハニー達。


『じゃあ今日、ランチ閉めちゃえば?』


 そう言おうと思ったけど止めた。

 店を閉めると稼げないからみんな困るんだ。


 意味がよくわからないって?


 魔界とか仕込みとか?

 どうして稼がなきゃいけないのかって?

 そもそもお前は誰だって?


 焦らないでよ、ハニー達。


 そんなにいっぺんに知ってしまったらつまらないんじゃない?


 ゆっくり始めようじゃないか。


 ようこそ、ここは人外レストラン『trick or treat』略して『TOT』


 案内役はわたくし、ヴァンパイアのキュウにお任せを。

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