魔王選抜!面接です!

ちびまるフォイ

こいつが一番魔王らしい

「では、次の魔王様、どうぞ」


部屋に入って来た魔王は魔法の杖を持っていかにもな風貌だった。

けれど面接官は少しもビビらずに言葉を投げかける。


「自己PRと魔王になりたい志望動機を」


「あ、えと、僕は昔から魔王に興味があって、

 魔法もA5ランクまで使えるので向いていると思います」


「はい、却下」


「ええええええ!? 早くないですか!?」


「あなたには魔王の資質が足りません」


面接官の鋭い言葉に魔王候補はすごすごと引き下がった。

次の魔王がやってくる。


「ククク……我は666国をも血に染めてきた魔王である」


「自己PRと魔王になりたい志望動機を」


面接官はブレない。

あいかわらずの高圧的な聞き方で相手のペースを崩す。


「我は世界の破滅と魔物の繁栄を願ってやまない。

 これが魔王の資質という以外になんであるか」


「はい却下」


「なにぃ!? まだ冒頭ではないか!!」


「あのですね、大物ぶるのは結構ですが中二病にしか見えません。

 魔王はあくまでも絶対強者としてイメージをもたせる必要があります」


「びええええ!!」


むしろ面接官の方が絶対強者感がすごい。

魔王は泣きながら部屋を出て行ってしまった。


「次どうぞ」

「次どうぞ」

「次、どうぞ……」


「次……どうぞ」


「はい、入ってーー……」


  ・

  ・

  ・



「……はぁぁぁ」


面接はまだ続いていたが面接官は疲れにつかれていた。


「面接官さん、大丈夫ですか?」


「どいつもこいつも魔王の資質がついていない、まったく」


「私にはみんな魔王になれそうな気がしましたけどね」


「いいかい、魔王ってのは誰にでもおびえない度胸と

 それでいて容赦なく切り捨てるような冷酷さが必要なんだ。

 それなのに……」


面接官がふとなにか思いついたように言葉をつまらせた。


「……いや、待てよ! いたぞ! いたんだ! 最高の魔王が!」


「本当ですか! いったい誰ですか!?」


「そんなことよりもうすぐ勇者が来るぞ! 準備しなくては!」


面接官はあわてて移動の準備とBGMなどを用意した。

魔王城の玉座の間はおどろおどろしい雰囲気が作られた。


やがて正面の大扉が開かれると、勇者がやってきた。


「僕は勇者ゆうた! さぁ、魔王出てこい! やっつけてやる!」


玉座に座る魔王はゆっくりと振り返った。




「では、自己PRと勇者の志望動機、

 そして世界を救ってどうしたいかを簡潔にお願いします」



「え゛……」


魔王は勇者相手にでさえまったく動じない「度胸」と、

情け容赦ない問いかけを行える「冷酷さ」を持ち合わせていた。

誰よりも魔王の資質をかねそなえていた。


「さぁ早く答えてください」

「答えないんですか? 勇者なのに?」

「だったらどうしてここまで来たんですか?」



「さぁ、はやく!!」



へんじがない。ただのしかばねのようだ。

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